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[記事]中国の"オタク"と"オタクマーケティング"。

Hu Ge, TNS China


(中国の)オタク


日本語で「オタク」といえばマニア、すなわち、あるテーマや趣味、特に日本のアニメ、マンガ、ゲーム、その他様々な日本の文化に対し、過剰、そして執拗に興味を示す人を差します。中国では、その文字(宅)がそのまま持ち込まれ、一日中家にこもって現実よりもバーチャルな世界で生きることを好む若者を「宅(ザイ)」(宅男/ザイナン、宅女/ザイヌー。インドアな男性/女性のこと)と呼んでいます。この若者たちは、ほとんどの時間を家で、個人的な習慣や趣味に浸って過ごし、現実の社会的な交流にはほとんど興味を示しません。本当のところ、中国での「宅」のコンセプトは、日本の「オタク」と西洋のカウチポテトを結びつけたもので、その概念は、その2つのうちの好ましい方の考え方(またはその逆。これはあなたの見方次第です)を含んでいます。


「宅」現象は、中国の若者たちの間でよく見られるようになりつつあります。彼らが学校と職場以外で過ごしたいと思うただ一つの場所は、家です。(彼らは)家では誰にも邪魔されたくありません。話しかけられることすら嫌なのです。そして、自分のほしいものは何でもインターネットから手に入れたいと思っています。中国の若者は、自分が宅男、宅女であると喜んで認めます。彼らは、リアルの会話よりもオンラインでチャットすることを好みます。もし、現実の会話をする必要性が生じた場合、彼らの多くは強く困難を感じるでしょう。ところが、オンラインに舞台が移ると、彼らはその言語スキルを遺憾なく発揮します。彼らは、インターネットスラングを熟知しているだけでなく、時には自分でネット上の言語やスタイルを創り上げます。


「宅」の多くの側面


大学は、インドアな男女が一般的に繁殖する場所です。「宅」でいることは比較的安価なので、寮や下宿でACG(アニメ・コミック・ゲーム)に浸ったままでいることが助長されています。インドア男性の中には、大学卒業時に就職活動に挫折し、ニートになってしまう若者もいます。さらに、すでに数年仕事についている若者も「宅」になり得ます。彼らは、仕事や社会からのすべての要求やプレッシャーに嫌気が差し、家にこもることを選ぶのです。インドア男性もインドア女性も自分たちを恥じたりはしません。むしろ、しばしばジョークにさえします。2012年のTRUリサーチ(若者を対象に40ヵ国で行われたTNSの調査)によると、60%近くの中国の若者がインターネットなしでは生きていけない、と答えています。日常の時間の過ごし方で最も重要な活動は、食事や睡眠の次にインターネットです。彼らにとって、QQやMSNでコミュニケーションすること、例えば、自分の気持ちをシグナルを使って表現したり、RPG(ロールプレイングゲーム)でオンライン上の仲間と集ったり、バーチャルペットと遊んだりすることが習慣になっています。


専門家は、若者があまりにも多くの時間をスクリーンの前で費やしていることを心配しています。心理的にも身体的にも害を及ぼす可能性があるからです。そのようなわけで、「宅」を部屋から引っ張り出すことが、多くの人、すなわち、教育庁、親、そして若者自身を含めた社会全体の懸念する問題なのです。


オタク産業


しかし、同時に、私たちは近年のオタク産業の高揚を目にしてきました。増加し続ける「オタク」たちは、レアなアイテムを購入してコレクションする能力、一番新しくてすごいアイテムをグループの中で一番早く手に入れる手腕、彼らのお気に入りのアニメやアイドルに関するトリビアの中でも一番のトリビアを知っていることを非常に誇りに思っています。関連する産業が、オンラインゲームやオンラインショッピングから映像ダウンロードまで徐々に色々な範囲に広がり、ますます盛んになっています。オタク産業は、前途が見込まれる重要な文化産業になりました。中国では、例えば、Netease、Shanda、Taobaoは、「宅」またはオタク現象の受益者です。中国のオンラインの売上は著しく成長しており、オンラインゲーム産業は今から数年で革新的に伸び、平均24%で成長し、2013年までには100億元(約1,250億円/1元=12.5円で計算)の規模まで届くと文化庁が見積もっているほどです。


「宅」現象とオタク産業は、オタクたちの間でもっと直接なオフラインの消費をけん引し、オフラインの世界とも繋がりを築いています。一つの例が「メイドカフェ」と「メイドレストラン」人気です。メイド服を着たウエイトレスは、顧客を「ご主人様」と呼び、「宅」が大好きなACG(アニメ・コミック・ゲーム)の雰囲気を創り上げています。「宅」は、その雰囲気やサービスに魅せられて、時間とお金をそのカフェで使うのです。「宅」を家から外へと誘引するのは、オンラインのアクティビティをオフラインに延長していくことで可能になりそうです。


「宅」マーケティング


しかしながら、「宅」のコンセプトと「宅」族は、マーケティング視点で見ると、関連する他の機会に繋がります。「宅」は、自分の興味のあるエリアに対する旺盛な購買意欲とは別に、専門的な分野に関しては驚くほど精通していることでよく知られています。何より、彼らはオンラインコミュニティ上の自分の存在というものを本当に楽しんでいて、インターネットでの情報の検索と共有に強いこだわりを持っています。それが、彼らを今日の口コミパワーの中心的エネルギーたらしめているのです。マーケターは、「宅」をリクルートしてきて、ブランドに対して好ましい口コミを書いてもらうこと、もっと言えば、ブランドの広報キャラクターにすることさえできます。明らかに、ブランドは、自分たちがリクルートするある特定の「宅」グループに対して広範な分野をまたいで興味を持つことが必要です。実際、マーケティング担当者は、それを超えることもできます。すなわち、「宅」との共同プロデュースです。その結果、彼らの特定の分野における強い興味と、オンラインでの購買意欲を結び付けることができます。したがって、「宅」な人々を引き込み、オンライン、オフライン両方でお金を使ってもらうように仕組むことと、「ブランド評価のマーケティング」に影響を及ぼすパワーをうまく利用することは、今日のブランドにとって大きなカギなのです。


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