【プレミアムとは何を意味するのか】

2018.08.22 広報室

ブランドの価格プレミアムを設定することはブランドエクイティの重要な構成要素ですが、しばしば見過ごされることがあります。有意義に差別化を図るブランドは、イノベーションや強固なマーケティング力を利用して、ブランドをプレミアム化することができますが、価格競争によってプレミアム・ステータスが低下する可能性も含んでいます。

年々ブランドエクイティに関して著述されることが増えてきましたが、ブランドエクイティがそもそも何を意味するのかについてはほとんど定められていません。カンターのブランドエクイティ測定のフレームワークでは、現在のブランドの強さ、潜在的成長性、プレミアム価格設定する能力の3つを通してエクイティを見ていきます。

エクイティフレームワークでは、3つ目の要素であるプレミアム価格設定を深く見ることはあまりありませんが、図1のように、一般的には価格が高いほど販売量は減少するためプレミアム価格の設定は重要です。価格設定を高くすることは、販売量を増やすことよりも純利益にはるかに大きな影響を与えます。

図1:多くの成長分析において価格が考慮されることはないが、個々のブランドの売り上げに大きな影響を与える

プレミアムとは何を意味するのか?

Kantar ブランドエクイティ測定のフレームワークは以下の3つの要素から構成されています。

意義性:全てのブランドにおける基礎的な要素です。ブランドがニーズや嗜好を満たさない限り、消費者がブランドを購入する可能性は低くなります。

差別性:ブランドの競争上の優位性/競争力です。有意義な差別化が必ずしも購入につながるわけではないが、その差別化が有意義だと消費者はよりそのブランドを選ぶようになります。

想起性:ブランドの成長を促す主な要素であり、想起性を伸ばすことができなければブランドの成長は見込めません。

ブランドエクイティ測定のフレームワークについて、詳しくはこちら→

カンターは、2013年にプレミアム指標を作成し、価格プレミアムが妥当だと認められるためには、ブランドが有意義に他と異なると思われる必要がある(ここにおいて想起性はさほど重要ではない)ことを見出しました。ブランドZデータベースの分析によれば、他に比べてコストがかかっていると思われているブランドは差別性が高いと思われていることが分かっています。

Kantar のR&Dチームは、ブランドのプレミアムのスコアが高いほど消費者はそのブランドによりお金を支払うことを繰り返し示してきました。エクイティ調査のデータと購買データ(回答者レベルで統合されたShopcomとFlyBuysロイヤルティーカードのデータ)は、意義性及び差別性のあるブランドには消費者はより高い値段を払うということを明らかにしています。図2のグラフは、6カテゴリ-79ブランドに対して2400人の消費者が実際に支払った平均金額を比較・分析したものを(プレミアムスコアで要約)消費者がブランドに対して感じた意義性・差別性毎に表したものです。

図2:意義性、差別性、想起性とブランドの知覚価格の関係性の平均
図3:よりプレミアムなブランドに消費者はよりお金を使う

ニュージーランドのキャットフードブランド、ピュリナ(Purina)とシェフ(Chef )は代表的ですが、非常に異なるビジネスモデルを持つ例です。Purinaの販売量はChefに比べて少ないですが、1キロあたりの価格がChefの倍以上です。その結果Purinaはより高い金額シェアとなっています。Purinaは他商品とは異なっていると認識されており、多くの人はその差別性が有意義であると感じています。Chefの商品を選ぶ消費者はPurinaの差別性に気づいていますが、その差別性は高価格に値するほど有意義ではないと捉えています。Chefの価格がはるかに安いということが彼らにとって意義のあることであり、想起性におけるその価格設定の利点がほぼ自動的に多くの売り上げを伸ばすことに繋がっています。

図4:支払額によって市場における価値に大きな違いを生み出す
図4:支払額によって市場における価値に大きな違いを生み出す

このピュリナ(Purina)とシェフ(Chef)に関する調査結果は、消費者の態度と行動を統合した支払金額の研究のすべてに反映されています。消費者がブランドの有意義な差別性を見出さないかぎり、プレミアム価格にお金を出すことはありません。
しかしプレミアムなブランドは、ブランドを安売りする必要はありません。人々のそのブランドに対する割引への関心は低く、正規価格を支払う傾向があります。

競争の激しいカテゴリーでは、価格競争に陥ることが多々あります。イギリスでは、ディスカウントスーパーマーケットのアルディ(Aldi)とリドル(Lidl)が市場に参入したことで価格競争が引き起こされました。その結果、アスダ(Asda)やテスコ(Tesco)、モリソンズ(Morrisons)そしてセンズベリーズ(Sainsbury’s)のプレミアムのスコアが落ち込みました。強いプレミアムエクイティを築くことで、ブランドは大きなディスカウントから持ち堪えることができます。ウェイトローズ(Waitrose)とマークス&スペンサー(Marks&Spencer)はプレミアムのスコアをうまく維持しました。既存のブランドがプレミアム化をはかるために必要な努力は軽視できず、一度プレミアムを失うと再度築くことは極めて難しい挑戦となります。マーケティングアクションを起こすためには、差別化の意味合いを根源から理解することが大切になります。

図5:イギリスの食料品小売店:プレミアム

次回記事は、「どのようにブランドの差別化を図るのか」について明らかにします。

KNOWLEDGE POINT:

KANTAR KNOWLEDGE POINTは主に2016年度の以下のデータベースに依拠しています。

    • 132,000件のブランドに対する調査
    • 100,000件以上の広告効果に関するデータベース
    • 1400件のケーススタディ
    • 900件以上のカンフェランンスペーパーと雑誌記事

※ブランドエクイティ測定のフレームワーク「The Meaningfully Different Framework(以下、MDF)」は、「マーケティング・アカウンタビリティ・スタンダード・ボード(以下、MASB)」による「マーケティング指標の監査プロトコル(以下、MMAP)」の審査プロセスにおいて、2018年に測定基準の審査を無事完了しました。詳しくはこちら

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