【どのようにブランドの差別化を図るのか】

2018.08.27 広報室_管理者

成功するブランドには様々な特徴がありますが、大まかに3つの要因:差別性、意義性、想起性に分けられます。想起性を高めることでブランドは成長する可能性が高く、有意義な差別性がある場合には、より成長を加速させることが可能です。強力なマーケティング活動は、これら3つすべての指標でブランドを成長させることができます。前記事「プレミアムとは何を意味するのか」に引き続き、今回はどのようにその差別化を図るのかについて明らかにします。

どのようにブランドの差別化を図るのか

私たちの差別化の指標は、「ユニークである」と、そして「特徴のある外観」との高い相関があります。ブランドは潜在能力を発揮するために差別化を図らなければなりません。これにはいくつかの方法があります。

図6差別性は商品そのもの以外のものによってもたらされます

差別性を利用する方法

ブランドの差別性は充分に発揮されていないことがあります。数年前、Kantar MillwardBrownはポーランドで医者と患者両方にインタビューを行い、18店舗の薬局で価格設定の実験を行うとともにOTC ホメオパシーブランドの調査を行いました。ブランドのエクイティは、大幅な値上げに耐えうるほどに強いという結果となりました。クライアントは価格を10%引き上げましたが、需要は変動しませんでした。

イノベーションを利用する方法

イノベーションは様々な方法で成し遂げられます。主要ブランドの改善、プレミアムな派生商品の導入、カスタマーエクスペリエンスの創造などが挙げられます。

図7:インドのマヒンドラ:プレミアム指数

インドでは2011年に、自動車ブランドのマヒンドラがセダンによって独占されていたセグメントに、プレミアムなSUVを発売しました。これは差別性が見受けられ、ブランドのプレミアム評価が2012年と2013年にピークを迎えました。しかし、その後ヒュンダイやルノーマルチなどが参入し、マヒンドラは差別性を失いました。

2009年にコカ・コーラは環境に優しいというポジショニングでいろはすブランドを日本で発売しました。このブランドはボトル飲料水のカテゴリーの壁を壊すためにまだ満たされていないニーズに踏み込みました。調査により消費者は、「環境問題に対して何かしたいという意欲はあるが、行動に移せていない」と感じているということが明らかになり、薄く軽いペットボトルは、いろはすが消費者にCO2排出量のより少ないブランドを選ぶ意味を与え、ボトルを捻るという行為を生み出し、消費者が環境保護への関わりを表現する機会を提供しました。市場が差別化のされていなかった2010年に、いろはすは差別化指数で171、プレミアム指数で135を獲得しました。いろはすのキャンペーンは競合と差別化を図り、9か月で3億本売り上げる日本で一番のミネラルウォーターとなりました。

2009年に米国の自動車メーカー ビュイックは斬新でデザイン性の高い多くの新しいモデルを開発するため、製品ライン全体の見直しを行いました。そして、この期間に、ポジショニング及びコミュニケーションを完全に新しくたてなおしました。新しくなった製品ラインはブランドをより有意義なものとし、今では各ラグジュアリーセグメントに製品を持っています。また、かつてのブランドから差別化を図る努力の成果として、ビュイックは本格的にラグジュアリーブランドとなりました。その結果、このブランドのプレミアムスコアは高級車カテゴリーにおいて大きく伸びています。スコアの推移を見ると、カナダでは2008年の82から2016年には100に、アメリカでは2009年の86から2015年には101に、スコアが伸びています。

強固なマーケティングを利用する方法

広告がブランドの価値を築くうえで最も大事な方法に、ブランド経験を作り上げ、拡大し、機能面でも感情面においてもより豊かな経験を与えることが挙げられます。一般的に、直接的なコミュニケーション(プレミアムブランドのキューやシンボルを使った)と 連想(小売り, イベント, タレントそしてメディアを利用した)の両方を通じて、ブランドをプレミアム化することができます。

2010年、スペインのビールブランドのエストレージャ・ガリシアはその地域のみでの消費ではこれ以上の成長を見込むことができないと判断し、全国展開に踏み切りました。最初の戦略では、ブランド認知度及び味と品質の連想を向上させるために全国でのテレビ広告キャンペーンを行いました。この戦略は積極的なマス以外の広告活動(スペインの主な都市のバーやパブでのエストレージャ・ガリシアの店内装飾広告)やスポンサーシップに支えられました。スペインでのブランド認知度は54%から94%にあがり、ブランドエクイティを測定する指標であるパワーのスコアは3.3%から8.2%に上昇し、全国展開は大きな成功をおさめました。地元の伝統的なブランドだけでなく国際的なプレミアムブランドにも打ち勝つ、スペインの消費者にとって有名で有意義なブランドとなりました。全国展開すると味と質の違いがさらに明確になり、ブランドの有意義な差別性が増幅されました。 これにより、プレミアムの評価は、102から117へと上がっています。

The Weave Your Magic(あなたの魔法をかけよう)というルアーパックバターのキャンペーンでは、食事を準備している様子が映っている綺麗な写真を用い、ルアーパックのバターをそのレシピの材料として位置付けることで、「Good Foodのチャンピオン」としてのブランド確立を助けました。食べ物が好きな消費者は、よりこの製品に対してお金を使うことを厭わなくなりました。

最近イギリスでは、イタリアのビール、ペローニ・ナストロ・アズーロ(Peroni Nastro Azzurro)が高級なビールとしてブランドをポジショニングし、プレミアムを示唆する記号を含むシリーズ広告などによる強固なマーケティング活動によって成長しました。このビールはイギリスではイタリアと異なる受け取られ方をしており、イタリアではとても想起性が高く・買うときに頭に浮かぶブランドですが、イギリスでは 意義性・差別性が高く、プレミアムの数値が高いブランドとなりました。

図8:親会社のPeroniがイタリアで成長している間にイギリスではPeroni Nastro Azzuroがプレミアムブランドとなりました。

まとめ

プレミアムブランドの特徴を探ると、成功へのルートは一つではありません。大きなプレミアムブランドを見てみると、アメリカンクルー(アメリカ)は反抗的で、アップルのiPhone(アメリカ)はクリエイティブで 、トータル(フランス)は自己主張が強く、ベーシック(ドイツ)はユニークで、 グーグル(ベトナム)は信頼できるといったように評価はさまざまです。

プレミアムブランドになることはブランドにとって難しいことではありますが、そのブランドのプレミアム評価を上げることはブランドにとって成長性と利益率をあげるための一つの目標となり得るでしょう。

KNOWLEDGE POINT

KANTAR MillWARDBROWNによって提供されるこのKNOWLEDGE POINTは主に2016年度の以下のデータベースに依拠しています。

  • 132,000件のブランドに対する調査
  • 100,000件以上の広告効果に関するデータベース
  • 1400件のケーススタディ
  • 900件以上のカンフェランンスペーパーと雑誌記事

また、ブランドエクイティ測定のフレームワーク「The Meaningfully Different Framework(以下、MDF)」は、「マーケティング・アカウンタビリティ・スタンダード・ボード(以下、MASB)」による「マーケティング指標の監査プロトコル(以下、MMAP)」の審査プロセスにおいて、2018年に測定基準の審査を無事完了しました。詳しくはこちら

本記事は、カンター・ジャパンのニュースレターに掲載されています。

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