【メタ分析事例付き】 クリエイティブの成功法則は一つではない
―AIから自動生成されるクリエイティブ要素タグを活用して、目的、メディア、カテゴリによって異なるクリエイティブ知見を強化する 




執筆:クリエイティブ&メディアグローバルナレッジディレクター ポリー・ウィン・ジョーンズ 


高いROIを実現するためのAIクリエイティブ分析

Kantarはこれまで、創造性が高く効果的な広告は、マーケティング投資収益(ROI)において4倍以上の利益効果を生み出す可能性があることを明らかにしてきました。そう考えると、マーケターは効果の低い広告に予算を投じる余裕は、もはやないのではないでしょうか。十分な根拠のない投資は大きなリスクを伴います。特に現在は、ブランドがこれまで以上に多くのコンテンツを制作しており、競合他社もAIを活用した分析によって、効果の低いクリエイティブへの投資を回避しようとしているからです。

Kantarでは、AIを活用したクリエイティブテストとクリエイティブタグ付けを通じて、さまざまなクリエイティブ要素やその組み合わせが、広告の創造性や効果をどのように高め、あるいは損なうのかを分析しています。さらに近年では、限られた予算においても、どのようなクリエイティブ要素が売上の創出や将来の需要形成に貢献するのかをより深く理解するため、AI活用を強化しています。

あらゆるAI技術と同様に、その性能は学習データの質によって左右されます。Kantarは、実際の消費者によって評価された26万件以上の広告データを蓄積したLINK+のデータベースを活用し、長年にわたり大規模なインサイトを生み出してきました。KantarのAIクリエイティブ評価ソリューションであるLINK AIは、このデータベースを基盤として学習・検証されています。LINK AIを活用することで、ブランドは数百から数千本規模の広告を短期間で評価し、カテゴリーや市場、さらには特定のメディア環境に特化したメタレベルのインサイトを得ることができます。また、広告効果を評価するための信頼性の高いインテリジェンスを提供するとともに、各広告の映像や音声要素を詳細に分析し、効果につながるクリエイティブ要素を特定します。

この一貫した自動レビューによって、広告の色彩、ブランド要素、ロゴの有無など、人手による分析だけでは捉えきれない詳細な要素まで評価することが可能になります。例えば、広告における商品デモンストレーションの効果については従来からよく知られていますが、広告内の特徴を細かく識別するAIベースのクリエイティブタグ付けシステムを用いることで、どのような表現方法が最も効果的なのかを、より詳細な粒度で理解することができます。

効果的でインパクトのある広告を生み出すには、創造性、戦略的な計画、消費者ニーズへの深い理解、そしてデータに基づく分析を組み合わせることが不可欠です。成功への万能な方程式は存在しません。ブランドの差別性を構築するためには、独自の発想に加え、人間ならではの視点や信頼性をもたらす「人の知見」が引き続き重要な役割を果たします。

高い成果を上げている数千本の広告に共通する要素を特定することで、マーケターはクリエイティブと分析の両方を効果的に活用できるようになります。その結果、消費者の共感を得ながら高いROIを生み出す広告を実現し、競争優位性を維持することが可能になります。 



指標や目的によって、有効なクリエイティブ要素は異なる

AIを活用した広告評価とクリエイティブタグによって、広告効果を生み出す要因に関する理解はさらに深まり、新たな発見も生まれています。AIによるクリエイティブタグの活用で、広告内の登場人物が「怒っている」「悲しんでいる」「喜んでいる」といった特徴まで識別することができます。例えば、分析結果によると、怒った表情や態度の登場人物が含まれる広告は、そうした登場人物が登場しない広告と比べて、総合的なインパクトが平均で5パーセンタイルポイント高くなる傾向が見られました。つまり、怒りを表現する登場人物は、広告への関与や記憶に残る効果を高める可能性があります。

一方で、その効果にはトレードオフも存在します。怒りを表現する登場人物が登場する広告は、説得力(Persuasion)が平均で11パーセンタイルポイント低下する傾向も確認されています。つまり、怒った登場人物の活用は必ずしも避けるべきものではありませんが、そのクリエイティブ表現がブランド戦略と整合し、広告全体のインパクト向上を目的とする場合にこそ効果を発揮すると言えるでしょう。  



効果的なクリエイティブ要素はカテゴリーによって異なる  

商品やサービス、あるいはプロモーション内容を広告内で明確に見せることは、効果的な広告を生み出すためのよく知られた手法です。しかし、すべてのカテゴリーで同じレベルの説得力が得られるわけではありません。ブランドは、広告効果と説得力の最適なバランスを見極める必要があります。特に効果の高い広告の多くは商品そのものを明確に表示し、実際に使用している様子をデモンストレーションすることで、さらに高い効果を生み出しています。

しかし、この手法はすべてのカテゴリーに当てはまるのでしょうか。分析の結果、食品・飲料カテゴリーや医薬品ブランドでは、広告内で商品を前面に打ち出す「スポットライティング(Spotlighting)」の手法が、説得力の向上につながる傾向が見られました。一方で、他のカテゴリーでは、その効果は必ずしも同じようには確認されていません。  


 



Kantar Creative Effectiveness Awards 2024でデジタル/ソーシャル部門第7位に選ばれたKitKatの「Locked Out Face ID」広告は、その好例です。 





商品を広告の中で訴求する方法として、「今すぐ購入したい」「見逃したくない」と感じさせるような「緊急性」を活用するアプローチがあります。この手法は、小売・サービスカテゴリーの広告で比較的よく見られます。しかし平均的に見ると、これらのカテゴリーでは、他のカテゴリーほど高い説得力を発揮していないことが分かっています。一方で、食品・飲料カテゴリーや日用品カテゴリーでは、商品を緊急性とともに訴求することで、平均的により高い説得力が得られる傾向が見られます。 





効果的なクリエイティブ要素はメディアチャネルによって異なる

広告クリエイティブは、メディアチャネルに合わせてカスタマイズすることが重要であることは広く知られています。なぜなら、広告効果を生み出す要因はチャネルやフォーマットによって異なるからです。では、テレビとデジタルの両方で有効に機能する表現や手法はあるのでしょうか。

分析の結果、クローズアップショット(商品の接写)は、メディアチャネルを問わず、広告の説得力を高めるとともに、楽しさの向上にもわずかながら貢献する傾向が確認されました。一方で、顔のクローズアップは広告の楽しさを高める効果があるものの、必ずしも説得力の向上にはつながらないことが分かっています。また、極端に広い画角のショットといった映像表現も、メディアを問わず広告の楽しさを高める傾向が見られました。

しかし、説得力の向上という観点では、その効果が確認されたのは主にデジタル広告においてでした。このように、同じクリエイティブ要素であっても、メディアチャネルによって発揮される効果は異なります。そのため、広告の目的や配信先の特性に応じて、最適な表現を選択することが重要です。 






クローズアップショットの効果的な活用例として、2025年のKantar Creative Effectiveness Award受賞作である、Dettolの「HSC – Let Life Flow」広告が挙げられます。この広告では、被写体に寄った映像表現に加え、ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)による感覚に訴えかけるサウンド演出を組み合わせています。 



 

効果的なクリエイティブ要素は、カテゴリーとメディアチャネルの組み合わせによってさらに異なる  

効果的なクリエイティブ要素は、カテゴリーによって異なるだけではありません。メディアチャネルとの組み合わせによっても、その効果は変化します。では、広告が考慮すべき複数の要素を掛け合わせて分析した場合でも、これまで見てきた法則は当てはまるのでしょうか。例えば、食品・飲料カテゴリーの広告は、テレビとデジタルの両方において高い説得力を発揮するのでしょうか。

先ほど、パーソナルケアブランドにおいては、テレビ広告で商品を前面に打ち出す「スポットライティング(Spotlighting)」手法を用いても、一般的には説得力の向上につながらないことを見てきました。しかし、デジタル広告に限定して分析すると、説得力が大きく向上していることが分かります。同様に、ブランドのアイデンティティを印象づけるショット(Brand Identity Shot)を広告に組み込んだ場合も、パーソナルケアカテゴリーのテレビ広告では大きな違いは見られません。しかし、デジタルプラットフォーム上の広告では、説得力がより高まる傾向が確認されています。 







カテゴリーや市場、ブランド、メディアチャネルなど、複数の要素を組み合わせて分析することで、クリエイティブ効果に関するより詳細な違いを明らかにすることができます。このような分析は、さまざまなクリエイティブ手法がどのように相互作用し、広告効果に影響を与えているのかを、きわめて細かいレベルで把握する機会をもたらします。マーケターはそこから新たなインサイトを得て、より効果的なクリエイティブ開発につなげることができます。 



質の高いデータがAI時代のクリエイティブインテリジェンスを支える 

広告効果は、単純に特定要素の有無で決まるものではありません。重要なのは、それらの要素を適切に活用し、ブランドとの親和性や関連性を高めること、そしてメディアチャネルに合わせて最適化することです。Kantarは、26万件以上の広告データベースをもとに、ユーモア、音楽、スローガン、著名人の起用といった主要なクリエイティブ要素が、広告効果にどのように貢献するのかについて豊富な知見を積み上げてきました。

さらに現在は、AIの活用によってその知見を次のレベルへと進化させています。優れた広告を生み出す要因について、これまで以上に深く理解できるようになりました。一方で、上記の事例で挙げたように、特定の業界やブランド、市場、メディアプラットフォームで効果を発揮する手法が、別の環境でも同じように機能するとは限りません。

キャンペーン効果をさらに高めたいマーケターは、AIを活用したクリエイティブ評価やクリエイティブタグデータから得られるメタ分析の知見を、ブランドのクリエイティブ効果向上プログラムの基盤として活用することが重要です。

Kantarは業界最大規模の広告データセットを基盤にAI機能を構築しています。これにより、信頼性の高い質の高いデータを提供し、広告クリエイティブの最適化とマーケティング予算の最大活用を支援しています。詳しくはぜひKantarまでお問い合わせください。 




※本記事はKantar Globalが公開した記事をもとに日本語訳・編集したものです。 
原文(英語)はこちら:Creative tagging with AI builds creative intelligence


 【本件に関するお問い合わせ先】

  • – ディレクター、ヘッドオブグロース&マーケティング 小川朋子
  • – E-mail:marketingjapan@kantar.com
        


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