マーケターのためのブランド戦略 エンドーサーブランドについて

エンドーサーブランドとは

他のブランドに「お墨付き」を与えるブランドをエンドーサーブランドと呼びます。エンドーサー(Endorser)とはもともと小切手などに裏書する保証人を意味します。マスターブランドも同様に傘下のサブブランドに信頼と安心の保証を与えますが、マスターブランドの場合は安心の保証だけではなくマスターブランドが提供する中心価値の面からもサブブランドを支援します。それに対し、エンドーサーブランドは信頼と安心の保証だけを与えるのが目的である点が異なります。エンドーサーブランドが広く用いられるのには、以下の理由が挙げられます。





エンドーサーブランドの事例

M&Aによる資本再編成が積極的に行われているホテル業界をみると企業ブランド下のブランドポートフォリオに、BY MARRIOTT、BY Hiltonのようにオーナー企業ブランドを加えられているものとそうでないものがあることが分かります。MARRIOTTグループでは、RITZ-CARLTON、WESTIN, SHERATONのような老舗ホテルブランドにはBY MARRIOTTとは表記されていません。傘下のチェーンブランドにBY MARRIOTTをつけるのは、MARRIOTTブランドによる同様のお墨付き効果を狙ったものだと考えることができます。FairfieldやCOURTYYARDといったホテルチェーンは日本人にとってあまりなじみがありませんが、”BY MARRIOTT”とあれば安心材料につながるといえます。



カンターの調査データベースBrandZからの引用です。BrandZではブランドの力を想起性・意義性・差別性の3要素から算出して、ブランドが消費者の頭の中に占めるマインドシェアを割り出します。マインドシェアがUSAで一番大きいのがヒルトンホテルで、マリオットはそれに次いで2番手につけており、USAの消費者の中で相対的に大きな存在のブランドです。

一方、系列化のシェラトンやウエスティンはそれほど大きなマインドシェアを得ているわけではなく、意義性や差別性でもマリオットに劣りますが、シェラトンやウエスティンにBY MARRIOTTとつけないのは、それぞれのブランドが固有のブランドの個性や世界観を持つ老舗ブランドであるからだと推測されます。



日本ブランドに多い企業名=マスターブランド=エンドーサーのハイブリッド型ブランド

日本の代表的なブランドは、企業名がそのままマスターブランドとなり、その傘下のサブブランドをエンドースする形をとるものが多いのが特徴です。例としてTOYOTA, Panasonic, SONY, SHISEIDO, Ajinomoto, NINTENDO, Rakutenなどが挙げられます。中には創業時の社名を後にマスターブランド名に変更している企業もあります。その理由は、経営資源の効率的運用であると推測されますが、日本企業の多くがよい製品を作り提供する「モノ作り」の大切さを重視し、その想いを企業文化の精神的支柱としており、製品であるブランドと作り手である企業の魂が一致していなければならないといった日本固有の美しい精神文化的な背景もあるのではないかと考えられます。

カンターはグローバルベースの調査会社として、ポジショニングマップ例として紹介したNeedScopeを数多くの海外市場で実施しています。海外市場で日本ブランドは青色領域の提供価値を感じられることが多いようです。技術力が高いブランドは青色に知覚されやすく、日本ブランドの精神性を考え合わせると興味深い点であるといえます。



消費者の感情を深く理解できる調査ソリューション「Needscope」について

強いブランドは感情のレベルまで消費者と結びついています。情緒ニーズを理解するためのフレームワーク「NeedScope (ニードスコープ)」は、人々の心理の普遍性を分析し開発されました。ブランドのポジショニングを決める際、消費者の情緒的側面を明らかにすることで、ポジションを明らかにするツールです。このツールの特徴は人の情緒を大きく6つに色分けしている点です。NeedScopeは感情に焦点を当て、ブランドのポジショニングを差別化し、タッチポイント間で一貫した体験を提供するために必要な方向性を提供します。心理学に基づく検証済みのフレームワークとAIを含む独自のツールにより、戦略的優位性と競争優位性をもたらす魅力的なブランドの構築を支援します。



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