Branded House戦略によるブランドアーキテクチャー
マスターブランドの中核的な提供価値を基に、バリアントブランドと呼ばれる子ブランド(サブブランド)を展開するブランドアーキテクチャーをBranded House戦略と呼びます。典型的な例がメルセデスベンツです。マスターブランドは特定の情緒的価値と強固に結びついていることが多く、ブランドの中心的価値となっています。従って、マスターブランドの下にあるバリアントブランドもマスターブランドの「ファミリー」としてその中心的価値を体現又は強化する役割を担っています。マスターブランドが中心価値の周辺にサブブランドを拡張している場合も同様のことが言えます。隣り合った情緒的価値にまでブランドが拡張していても、そのブランドの根源的な中心的価値はマスターブランドにあります。メルセデスベンツの例を情緒ニーズを理解するためのフレームワークNeedscopeを使って説明すると、マスターブランドの中心価値を軸足にして、より情熱的で活動的な領域(赤の情緒価値)とより賢く自信に満ちた領域(青の情緒価値)まで製品ラインが拡張されています。
*この分類結果は弊社ニードスコープの分析専門家の経験値と知見によるもので、実際の実査結果に基づくものではありません
マスターブランドがある情緒的価値にポジショニングすることに成功すれば、その提供価値を基軸として隣接する領域にブランドを拡張することができます。但し、この拡張に用いられるサブブランドはあくまでもマスターブランドの延長なので、その中心価値はマスターブランドと同じです。もしサブブランドのポジショニングを変えようとすればマスターブランドの強みである中心価値への影響が懸念されます。サブブランドの役割はマスターブランドと同じ中心価値を持ちながら、新しい領域への価値を付加することにあります。
下図のフォルクスワーゲンの例は、マスターブランドの中心的提供価値(例では赤の領域)と反対側(白い領域)にバリアントなしサブブランドを拡張することは困難を伴うことを示しています。何故なら、マップの反対側には対立する情緒的価値が置かれるため、サブブランドが新しく提供しようとする価値がマスターブランドの中心価値に対し矛盾と混乱を生じてしまうからです。
*この分類結果は弊社ニードスコープの分析専門家の経験値と知見によるもので、実際の実査結果に基づくものではありません
House of Brands戦略とブランドポートフォリオ
House of Brands戦略は、企業ブランドの下でそれぞれ独立した複数のブランドが展開され、一般的に企業ブランドよりも個別の製品ブランドの方が重視されます。個々の独立したブランドを所有し、オーナー企業のビジネスの最適化を図るブランドポートフォリオです。
実際のポートフォリオでは下記の例のように偏りが生じます。橙色の領域では複数のブランドが重複している一方、青色の領域が空白(ホワイトスペース)となっています。もし、カテゴリーが異なる等橙色の領域でブランドCとGが競合しない、あるいは補完し合っているのであれば問題ないですが、競合してお互いのシェアを食い合っているのであれば調整が必要となります。また、空白の青色領域が、企業にとってのホワイトスペースであれば、成長機会があることになります。
ポートフォリオの理想は下記の例のように、最小限のブランドであらゆる成長機会をもれなくカバーできるように最適化されていることが望ましいと言えます。
フォルクスワーゲンは、10近くの自動車ブランドを保有する国際的大企業の企業ブランド名でもあります。フォルクスワーゲン社のブランドポートフォリオをみると、それぞれのブランドにより市場の成長機会のほぼ全てがカバーされていることが分かります。
一方で、ポルシェと全く同じSUV車種を用いたTOURAGEはポルシェのポジショニングと被っています。マスターブランドとしてのフォルクスワーゲンの中心領域が下記マップの左側であることと、フォルクスワーゲン社のブランドポートフォリオの右側にポルシェという非常に強いブランドがありポートフォリオ内でのカニバリゼーションのリスクがあることを考えると、TOURAGEのマーケティングの難しさが理解できます。
*この分類結果は弊社ニードスコープの分析専門家の経験値と知見によるもので、実際の実査結果に基づくものではありません
複数のブランドを展開している企業は、企業価値向上のためにブランドポートフォリオ戦略が必要です。そのために自社が展開するブランド間でカニバリゼーションは起きていないか、また、シナジー効果が発揮されているかなどの状況を把握することが重要です。ブランドポートフォリオ戦略を検討される際は弊社までお気軽にお問合せください。
■本件に関するお問い合わせ先
合同会社カンター・ジャパン
PR/マーケティングチーム
E-mail:marketingjapan@kantar.com
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