マーケッターのためのブランド戦略

【第1回】ブランドの強み・弱みをどのようにブランド戦略に取り込めばいいのか?


ブランドの市場における強み・弱みを類型化し、他カテゴリーのケースも参照しながらデフォルトの「処方箋」をたたき台に使う

マーケティングの担当者であれば、担当するブランドの強みや弱みはある程度把握できていると思います。問題は、それをどのように、どの程度までブランド戦略に反映させるかだと思います。ブランドの弱点が既に明白であっても、その改善・強化をどの程度戦略に盛り込むべきか、改善不可能な課題を盛り込んでしまえばその戦略は実現不可能な無意味な作戦となってしまいます。あるいは実行可能な改善策やマーケティングに活用しやすいブランドの強みが多数あるような場合、どれを優先的に選択すれば戦略がより効果的でかつ効率的になるか、悩みどころだと思います。


カンターではブランドエクイティに関する消費者調査を世界中で20年以上続けてBrandZというデータベースを保有しています。



このデータベースを用いて、ブランドの強み・弱みのパターンによって10の類型(タイポロジー)に分類しています。また、この分析ではブランドの強み・弱みを、意義性・差別性・想起性という3つの指標によって数値で可視化しています。全ての指標はカテゴリーを横断して標準化しているため、カテゴリーが異なる全てのブランドをそのまま指標で比較することも可能です。

このタイポロジー分析の結果を1行で集約すると「ブランドの世界は不公平にできており、強いブランドが益々強くなるように構造化されている」ということになります。




冒頭のブランド戦略に即して言うと、もし自ブランドが不公平なまでに優位な立場にあればその優位性を徹底的に活用してさらなる成長を目指すべきですし、もし不公平なまでに劣位にいればその状況からの脱却は容易なことではないので、置かれている状況を客観的かつ綿密に分析して勝機を見出す必要があります。回遊魚が泳ぎ続けないと死んでしまうように、ブランドも優位にあろうと劣位にあろうと、常に成長確率を高めるように努力をしないと衰退してしまいます。タイポロジー分析では成長確率も見ていますが、スターブランドやシンボルブランドのような絶対的優位なブランドは、成長確率が高くても必ずしも成長することが約束されているわけではなく、成長努力を怠れば衰退していきます。このように優位なブランドが成長努力を続ければ、劣位なブランドが益々収奪されていくことになります。劣位のブランドが市場で生き残っていくためには、勝つ=成長していくしか道はないことになります。シェア競争がどんなに激しくても、シェアは合算すれば100%にしかなりませんから、成長できなかったプレイヤーから脱落していくことになります。ブランド戦略にはこうした生き残りの道筋が描かれていなければなりません。そして実現不可能な成長の道筋を描いてしまったブランドは衰退していくことになります。

ブランドタイポロジー分析ではブランドの強み・弱みの類型ごとに、強みと改善ポイント、成長確率と実現可能性の目安を示します。これらはあくまでも参考とする類型であって、実際の市場では競合との相対的な関係性がより重要となります。例えばスター/シンボルブランドであっても、唯一のブランドが独り勝ちしている市場もあれば、同じ市場に複数のスターブランドが存在して激しい競争をしている場合もあります。この市場状況によって、非スター/シンボルブランドに対する圧力も異なります。しかしながら、自ブランドの可視化された指標から自ブランドが何を優先的に行うべきか、その実現難易度は高いのか低いのか、の見当をつけるのに参考になると思います。

10タイプの類型をそれぞれ説明していきますが、その前に各類型を特徴づけている各指標の見方について簡単に説明をしていきます。尚、意義性・差別性・想起性の3指標については、別記事(【第1回】マーケッターのためのブランド戦略 売上成長にとって重要なのは、マーケティング戦略か営業戦略か?)でも説明していますのでご興味のある方はそちらも参照してください。


ブランドの大きさと価値は、意義性・差別性・想起性という観点で決定される

カンターはBrandZの調査結果のデータベース分析から、消費者がブランドを評価するには意義性・差別性・想起性という3つの観点があり、それらを総合的に判断することで、ブランドが消費者の頭の中に占める「大きさ」と「価値」が形成されていることを明らかにしています。



デマンドパワー: 

デマンドパワーはブランドが消費者の頭の中を(購買前に)どれだけ占拠することが出来るかを示す指標です。各カテゴリー市場の中で、競合に対してどれだけ消費者の頭の中を占拠できているかを%で示す、マインドシェアの形で算出されます。また全カテゴリーで比較できるように標準化された指数(デマンドパワー指数)で表す場合もあります。BrandZの自主調査では、エクイティ関連項目を聴取する以外にも直近の購買ブランド等も聴取しているので、そこで回答された直近購買から推定マーケットシェアも算出できます。

下図を見てわかるように、マインドシェア(デマンドパワー)と推定マーケットシェアの相関は非常に高く、マーケットシェアを作るためにはまずマインドシェアを作っていく必要があることがわかります。




プライシングパワー:

プライシングパワーはブランドが消費者の頭の中に作り出した、ブランドの価値を示します。商材の価値は価格に換算されますので、最初にブランドに対する値ごろ感(知覚価格)を聴取した上で、その知覚価格に対してそれ以上の価値をブランドに感じるか、あるいは知覚価格ほどの価値を感じないかを聴取して、両者を合算してプライシングパワーを算出します。



知覚価格:

知覚価格は「平均的な価格」を想定して、ブランドの値ごろ感が平均的な価格とどれくらいかけ離れているかの指数で算出します。カテゴリーによって実際の価格は大きく異なりますし、同じカテゴリーの同じブランドでも実勢価格は店舗によって異なりますが、この方法だと「平均価格からの距離感」で全てのブランドを比較することが出来ます。下図はBrandZデータベースの知覚価格の分布ですが、平均的な価格を1.0として、やや左(安い方)に偏りを示しますが正規分布に近い形を示します。やや安い方に偏る理由としては、実際の店頭では「平均的な値ごろ感」よりややお得感がある価格で値付けされることが多いからかもしれませんし、あるいは消費者の知覚(意識)上、「ちょうどいい」という値ごろ感が平均よりやや安いところにあるからかもしれません。知覚価格指数の平均は1.0になるように算出されますが、実際のブランドの知覚価格分布は平均よりやや安いところにボリュームゾーンがあることになります。




プライシングパワーと知覚価格との関係性: 

前述したようにプライシングパワー指数には知覚価格評価が含まれていますが、価格以上の価値の有無が両者に差を生み出します。そのため、下図のように全カテゴリーでみると両者の相関は低くなります。実際はカテゴリーによって相関が高い場合と低い場合があります。後者のカテゴリーでは知覚された価格よりも、価格以上の価値があるかないかが重要でブランドは消費者から厳しく値踏みされている市場ということになります。それに対し前者は、ブランドの価値はほぼ値付けされた価格で決められている(値段の高いものがいいもの、値段が安ければそれなりの価値しかないと判断されている)市場ということになります。



上の図で緑丸のブランドは、「価格は高いがそれ以上の価値がある」と明らかに認識されているプレミアムブランドであり、赤丸のブランドは、「価格は安いがそれ以上の価値がある」と明らかに認識されているバリューブランドであることがわかります。このように指数の高低だけでもプレミアム/バリューブランドの判断はつきますが、実際の市場では茶色丸のようにプライシングパワー指数はそれほど高くなくてもバリューが感じられるブランドも存在します。何故なら、価値の判断には他の競合ブランドとの相対的な関係が影響するからです。プライシングパワーについては別記事(【解説】今後も続くインフレの経済環境下で、ブランドの価格戦略をどのように考えるべきか?)でも説明していますのでご興味のある方はそちらも参照してください。



次に、意義性・差別性・想起性の3指標についても簡単に説明をします。(また、意義性・差別性・想起性の3指標については、別記事(【第1回】マーケッターのためのブランド戦略 売上成長にとって重要なのは、マーケティング戦略か営業戦略か?)でも説明していますのでご興味のある方はそちらも参照してください。


想起性: 

メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティの効用を唱えているバイロン・シャープ教授はメンタルアベイラビリティでこの想起性を最重要視しています。BrandZのデータベース(国内)を見ても、想起性とマーケットシェアは高い相関を示します(下図左)。想起性はブランドの売り上げを作るのに非常に重要な要素だということが出来ます。想起性の算出にはトップオブマインドを用いています(但し自主想起でトップにあがる複数のブランドをカウントしています。)

この想起性は意義性とも相関を示します(下図右)。概念上は独立しているはずの両指標が相関を示すのは、消費者の購買サイクルで考えると理解しやすいので、次の意義性のところで説明をします。



意義性:

例えば新入社員の方が初めて職場配属されて、お昼にランチに行くケースを考えてみましょう。この方は、ファーストフード業界で言う商圏(職場のあるエリア)に初めてカテゴリーエントリーするわけです。職場の先輩に「いつもお昼はどこで食べていますか」と聞いたり、通勤の途中で近場にマクドナルドがあるな、と気づいたりすると思います。そこで、実際にお昼の時間になって「どこに行こうか」と最初に頭に浮かぶ飲食店が想起性です。この新入社員のように初めてカテゴリー(商圏)にエントリーする人にとってカテゴリー選択は「無難に外さない・リスクを冒さない」ことが大事で、先輩のエンドースがあるお店や、家族や友人と何度も行ったことがあるマクドナルドは無難な選択になります。

こうした想起性は、実際にお店に行ってみて「おいしかった」「お店がきれいで快適だった」「待たされずに済ませた」といった体験を経て、強化(あるいは劣化)されます。実際においしければまた来ようと思い、次回ランチの時に想起されやすくなります。このように体験により形成される評価や態度のことを意義性と呼んでいます。この意義性が想起性を強化する関係性を「意義のある想起性」と呼んでいます。意義性として体験されたことが想起性につながると、ブランドはより購買されやすくなるわけです。



意義性の算出は、ブランドのニーズ合致度と愛着度を聴取してそれを指数化します。意義性強化で最も重要なことは体験なのですが、このことはニーズ合致と愛着の関係をみてもわかります。愛着とはアウトプット(結果)であり、ニーズ合致とはインプット(結果に対する作用)を意味しますが、下図のように両者は非常に高い相関を示します。愛着が高いからバイアスでニーズ合致評価も高くなるということもあると思いますが、大抵の場合はニーズ合致が体験されることで愛着が強化されると思いますが、体験が意義性の2つの構成要因を密接に結びつけています。



意義ある想起性:

上の購買サイクルで説明した「意義のある想起性」の意義性と想起性の結びつき方は、いくつかのカテゴリーでは少し異なったパターンを示します。下図左は先ほど示した想起性と意義性の関係図ですが、グラフ上部3%(緑色部分)のブランドではより意義性が強い傾向があり、下部3%(ピンク色部分)では逆に想起性が強い傾向が見られます。

この上下の両側部分のブランドは下図右の表のように、ファーストフードやアパレルのようなカテゴリーでは、想起性がより強いマクドナルドと意義性が強いモスバーガー、想起性がより強いユニクロと意義性が強いナイキのように、ブランドによって分かれます。ところが、女性用スキンケアではロクシタンもSKIIも緑の上部(意義性が想起性よりも強い)に入り、ラグジュアリーではチャネルもルイビトンもピンクの下部(想起性が意義性より強い)に入ります。このようにカテゴリーによっても意義性と想起性の結びつき方には違いがあるようです。



先ほど購買サイクルの図で、意義性と想起性の結びつき方(ルーピング)を説明しましたが、意義性と想起性がそのようにループするのであれば各指数にこのように大きな隔たりがあるのはおかしいのではないかと疑問に思う方もいるかもしれません。新入社員の例のように一人の消費者の購買サイクルについてはまさにその通りですが、市場消費者を集団で捉えるとこのような隔たりが生じてきます。想起性指数が高く意義性指数が低い場合(例えばラグジュアリーのシャネル)、ラグジュアリーブランドとしてシャネルを想起する人は平均より多いが実際に使用・体験している人は平均より少ない、ということを意味しています。このように想起性が高いブランドの場合は意義性のスコアはユーザー数の多少を反映することが多いです。

逆に、スキンケアのSKIIのような場合、想起性の低さに対して意義性が極めて高くなっています。想起性がないのに購買されることはない(少なくとも調査上では、想起されないブランドが直近で購買したと回答されることは稀)ので、このような場合の意義性はユーザー数を反映しているのではなく(ユーザー数はむしろ想起性の方が反映している)、ユーザーの体験の質を表していることになります。つまりユーザーにとってSKIIのニーズ合致度と愛着が極めて高いことを意味しています。



差別性:

差別性は文字通り、他のブランドとは違っていることですが、これに時流を作り出しているという評価を加えて差別性の指数を出しています。例えばファッションの世界では今流行っているとか流行を作り出しているといったことが重要だと思いますし、パーソナルケアや食品では新成分や新テクノロジーが新しい消費を生み出していると思います。こうした時流を牽引する力も差別性の評価につながります。

先ほど、購買サイクルを使って意義性と想起性の関係を説明しましたが、差別性はこのループには含まれず独立した位置関係にあります。ラグジュアリーのような高関与カテゴリーでは、根源的なところにワクワクしたい、高望みしたい、といった願望(アスピレーション)や承認欲求があります。差別性はこうした願望を刺激します。先ほどの新入社員のランチの例カテゴリーケースには該当しませんが(ランチでワクワクしたり、高望みすることはあっても、願望や承認欲求は大げさだと思います)、デートや会食、特別な日の外食であれば差別性が重視されると思います。

上で紹介したラグジュアリーのシャネル、ルイビトンの意義性は低いですが、想起性と並んで差別性が高いことがわかります。このようなカテゴリーでは差別性があることが想起性につながっています。そして意義性より差別性が高いということは、ユーザーでなくてもそのブランドの差別性は理解できるということを意味しています。但し、意義性が低いということは、そのブランドの差別性の高さは充分理解できるがそれを自分が(高いお金で)購入して使うまでの意義は感じない、と多くの消費者に思われていることになります。




このような願望を刺激する高関与カテゴリー以外では、差別性は違った形で作用します。先ほどの新入社員のランチの例でいうと、時間が経って職場にも慣れてくると、ランチもいつもの店だけでは飽きてくるようになります。あるいは、いつもの店は気に入っているがいつも混んでいるのが難点とか、上司やお客さんと一緒にお昼に行くのにはカジュアルすぎて使えない、といった不満や要望点が出てくるようになります。こうした現在のアンメットニーズに他のお店が答えてくれる時、そのお店には差別性があると感じられるようになり、一度試してみた結果気に入れば新たなランチのレパートリーに加えられるようになります。こうしたお店の差別性はそのお店の意義性を高めてくれることになります。こうした意義性と差別性のルーピングを意義のある差別性と呼んでいます。このように不満やアンメットニーズを介在して、差別性の評価が購買サイクルの中に含まれるようになります。




先ほど紹介した意義性は高いが想起性が低い、スキンケアのロクシタンやSKIIの場合も差別性の評価が極めて高くなっています。こうしたブランドは想起性が低いのでユーザー数はそれほど多くないが意義性の質が高いと述べましたが、その意義性の質の高さはブランドが持つ高い差別性によって裏付けられていることになります。それにもかかわらず想起性が伸びないというのは(通常は高い差別性と意義性があれば想起性も高くなる)、スキンケアの場合は消費者の個々によりお肌の症状や課題が多様化しており、それぞれの症状・課題に応じたソリューションを提供する多様なブランドが存在するということだと思います。そのソリューションでロクシタンやSKIIはユーザーに高く評価されているのだと思います。とはいえ、その課題とソリューションにまだ気づいていない消費者がいれば、そうしたポテンシャル層への訴求を強化することでユーザー層も拡大し想起性も高まると思います。



意義ある差別性:

アンメットニーズの解消というような形でブランドの差別性と意義性が結びつくと、ブランドの価値を示すプライシングパワーもあがる傾向があります。(下図左)下図の「意義のある差別性」の指数は意義性と差別性の2指数を便宜上単純に平均したものを使っていますが、実際のプライシングパワーの計算では個々のカテゴリーごとにブランドに感じられる価格以上の価値を最もよく説明する意義性と差別性のウエイトが算出されています。カテゴリー毎のウエイト値を用いて正確に「意義のある差別性」を計算すればプライシングパワーとの相関はもっと高くなると思いますが、いずれにせよ両者は相関しています。また、ラグジュアリーのように高関与のカテゴリーでは、差別性だけでもプライシングパワーを上げることができます。

また、BrandZのデータベースを用いて、ブランドの金額シェアが1年以内に上がった場合に意義性・差別性・想起性がどのように変化したのかも研究されています。1年以内にシェアが上がる確率は想起性が平均以上あるブランドの場合「意義のある差別性」指数と相関することが確認されています。こちらの「意義のある差別性」も単純に両指数を平均したものが用いられているので、カテゴリー毎のウエイト値を用いて計算すれば相関は更に高くなると思います。





このように「意義のある差別性」のある=意義性と差別性の両指数が高いブランドは、ブランドの価値と成長確率を高めることが確認できています。


フューチャーパワー: 

上述のように、1年以内にシェアを伸ばしたブランドの研究でシェアの成長には「意義のある差別性」の高さが影響しているのですが、単に意義性・差別性の指数が高いだけよりも、一般的にブランドに期待される以上に意義性・差別性が高く評価されている時、成長確率が高くなることがわかりました。「一般的に期待される以上」とは、ブランドは想起性で代表されるように消費者の頭の中に「大きさ」を持っていますが、この「大きさ」に比例してブランドの意義性や差別性の強さも期待される傾向にあります。

あるブランドYの差別性指数が平均の100を下回る90の場合でも、ブランドの想起性やデマンドパワーの指数も平均を下回る90であれば、ブランドYはブランドの「大きさ」に順じた差別性を持っている、と評価することが出来ます。もしブランドYの差別性指数が平均的な100であった場合、ブランドの「大きさ」を考えればブランドYの差別性は「期待を超える」強さを持つ、と評価できます。市場にブランドYより高い差別性指数110を持つ競合Zがいても、競合Zのブランドの「大きさ」が110であればZは期待通りの差別性しか持たないことになります。このような時、差別性指数は低くても消費者の目には相対的にブランドYの方が差別性に特長があるブランドと映ります。それに対して、Zは他の指数も高いので、差別性がZの特長であるようには映りません。これを例えで言うと、身長と足の大きさの関係の統計で身長180cmでは足の大きさが30cm、身長160cmの場合は足の大きさは22cmだったとします。このような時、身長180cmの人が30cmの大きさの足だったとしても足の大きさがその人の特徴にはなりませんが、身長160cmの人が26cmの足であれば「足の大きさ」がその人の特徴として人々から認められることになります。

このようにブランドの期待値を超える差別性や意義性を評価されているブランドは(指数が平均の100を下回っていたとしても)、市場での成長確率が高くなっています。(また、このようなブランドの経年データをBrandZでみると、指数が100を下回っていても期待値を超えているような場合は数年後には指数で100を超えるスコアを上げていることが多くなっています。)

このような意義性・差別性の期待値を超える評価の現状から、将来の成長確率を指数化したものがフューチャーパワーという指標になります。




指数は平均が100で、指数100のとき成長確率がほぼ50%(=伸びる確率が50%、伸びない確率も50%)となるように算出されています。従って、指数100を超える時は、成長確率が高い(=伸びる確率が伸びない確率より高い)ということが出来ます。BrandZのデータベース上では、成長確率50%超と50%以下のブランドがほぼ半分に分かれます。(下図左)

また、上で説明した差別性の指数が期待値と異なるケースですが、BrandZの国内データでは、差別性指数は平均以下ですが期待値を上回るブランドが全体の9%(下図右の青の囲み部分)、差別性指数は平均を上回りますが期待値よりは小さいブランドが全体の5%(下図右の紫の囲み部分)を占めています。大半(86%)のブランドは、差別性はほぼ期待値通りの指数を示しています。



以上がタイポロジー分析を解釈するのに必要な指標の説明となります。

次回の第2回では、ブランドタイポロジー分析の説明をしていきます。 


 
カンター・ジャパンでは、ご要望に応じてここでご紹介したMDFモデルやフィジカルアベイラビリティの9つの指標を用いたアドホック調査を実施することが可能です。また、BrandZのデータベースから特定カテゴリーのケースをご紹介することも可能ですので、ご興味のある方は弊社までお気軽にお問い合わせください。
 

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