メディア環境が変わると、広告への反応も変わります。事実、広告への受容性が高いオーディエンスでのキャンペーン効果は7倍にも及ぶことがわかっています。では、各メディア環境で広告が効果を発揮するか否かを知る方法はあるのでしょうか。
メディアが細分化される今日、広告主はターゲットとするオーディエンスにリーチするために、さまざまなメディアチャンネルを利用する必要があります。使うチャネル、そして、各チャネルとコンテンツとの相性は、キャンペーンの効果に大きな影響を与えます。KANTARが実施したContext Lab(コンテキストラボ)調査によると、その広告に対する受容性が高いオーディエンスの間では、キャンペーンのブランドリフト効果は7倍にも及ぶことがわかっています。
そのため、各メディアコンテキスト(文脈)でのキャンペーン(コンテンツ)の受容性を検証することは、非常に重要になってきます。最近では、特定のチャネルでの効果の有無を短時間でテストすることが可能ですし、テストを実施することにより、広告投資によるリターンを平均で32%向上させることができます。
コンテンツは視聴者の「マインドセット」に合わせる必要がある
かつてデジタル広告への投資規模が小さかった時代、テレビ素材をそのままYouTubeでも配信することで、その効果が期待されたものでした。そして、その期待が裏切られることはよくあることでしたが、当時はデジタルにそこまで広告予算が投じられていなかったため、効果が無くとも、特に問題視されませんでした。極端な例ですが、TikTok広告をテレビで流すことは、その逆と同じで意味がありません。なぜなら、メディアによって使用時の「マインドセット」が異なるからです。そのため、コンテンツはそのメディア環境での視聴者の「マインドセット」に合わせたものでないと効果が期待できません。
今となっては、デジタルがメディア・ミックスの前線あるいは中心に据えられることが多くなり、もはやデジタルに「テレビのおさがり素材」で間に合わせるわけにはいきません。しかし、テレビ広告は、各メディアの使われ方の違いが適切に考慮されさえすれば、デジタルの成功要因から恩恵を受けることができます。
では、いかにしてテレビ広告はデジタルの恩恵を受けるのか?
今日では、デジタルやソーシャルメディアからヒントを得た見せ方やフォーマットをテレビ広告に取り入れる動きがあります。そうすることで、「今流行りの感じ」を盛り込むことができ、デジタルでの流行をオフラインに持ってくることができます。このデジタルのスタイルをテレビ広告に吹き込む戦略は、KANTARクリエイティブ・エフェクティブネス・アワード2022で、世界で最も優れた広告主が使用する5つの戦略の内の1つとして挙げられています。
スペインのテレビ部門受賞作品の内の1つである『チュッパチャプスXXL Flavor Playlist』はその良い例です。コミック風文字キャプション、音楽に合わせて編集されたダイナミックなクローズアップ、ダンサーが縦画面で登場するコマ(TikTok風)、(音無しのデジタル環境でも機能し得る)視覚的ユーモア等、デジタルの要素多くが盛り込まれています。
Chupa Chups “XXL Flavour Playlist
しかし補足すると、テレビ広告はデジタルの美学を多く用いることで恩恵を受けることができる一方で、先述の視聴者の異なる「マインドセット」に合うように適切にカスタマイズされる必要があり、メディア間での効果的なクリエイティブの転換を確実なものにするベストな方法は、そのクリエイティブをテストすることです。
異なるチャネルで、異なる「マインドセット」がある
メディアチャンネルがどのように利用されるかは、どのようなクリエイティブが最もよく受け入れられるかに大きく影響します。例えば、ソーシャルメディアのニュースフィードをスクロールして興味のあるものを探すのと、テレビでスポーツ中継を受動的に見るのとでは、大きな違いがあります。
ソーシャルメディアでは、コンテンツに積極的に関与し、自由にコンテンツをクリックしたり無視したりすることができます。そのため、そのような状況下では、広告は邪魔なものとみなされる可能性が高くなります。テレビでは、見るコンテンツへのコントロールは限られており、特に他にすることがなければ、番組の間のCMを何となく見ることになります。KANTARの実施するMedia Reactionsによると、デジタルチャネルよりもテレビでの広告に対しての方が、受容が高いことを明らかになっています。
デジタルチャネルでの広告はそれほど評判が良くないかもしれないという一方で、これらのチャネルには異なる強みもあります。例えば、Instagramで複数のファッションアカウントをフォローしていれば、適切なタイミングで関連する広告が表示される可能性が高まります。また、Amazonでの広告は、(何かを買うという)目的への関連性がさらに高くなる可能性があります。
コンテキスト(文脈)が重要であることはテストでも明らかに
KANTARのMedia Reactionsでは、各メディアチャンネルに独自の強みと弱みがあること、そしてブランドとキャンペーンの目的に最も適したメディア環境を見つけることの重要性を示しています。広告の事前テストでは、最高のパフォーマンスを発揮するためには、コンテンツをそのチャンネルに合わせたものにする必要があることが明らかになっています。
テレビ、YouTube、Facebookでテストした広告の例を見てみましょう。テレビとYouTubeでは、視聴者が広告をスキップすることができない場合、広告はブランディング(どのブランドの広告であるかを認識させる能力)において、それなりに良い結果を出しました。しかし、Facebookでは、広告の冒頭3%しか見られないままスキップされることが多く、ブランドが訴求される前にスクロールされてしまったことになります。また、両デジタルチャネル(YouTube、Facebook)では、広告のエンゲージメントはテレビより低くなっていました。そのため、Facebook向けには早めの段階でのブランドキューの提示すること、そして、両デジタルチャネル向けにはよりエンゲージが期待できるコンテンツ内の「つかみ」を持つことなど、それぞれのデジタルのコンテキスト(文脈)に合わせた広告の調整が必要であることが、このテストを通じて明らかとなりました。
広告がコンテキストの中で機能することを確認しましょう
広告キャンペーンを最大限に活用するためには、2つのステップを踏む必要があります。
- まず、それぞれのメディアチャンネルがどのように利用されるか、そしてその中で広告に期待されることは何かを考えてみましょう。これは、新しいメディアが次々と登場し、細分化されている今日では、特に重要となります。キャンペーンを考える上で、KANTARのMedia Reactions調査では、異なるチャンネルにおいて、広告が消費者にどのように捉えられているかのガイドラインを提供しております。
- 次に、(まだ修正の余地がある段階で)それぞれのコンテキストで広告をテストしましょう。今では、数時間足らずでテスト可能なので、予めテストした上で、各チャネルで最大限の効果が発揮されるようにコンテンツを適合させましょう。
特定のチャネルで何が有効かをテストしたり、異なるチャネル間でパフォーマンスを比較したりすることが、これまでになく容易にできるようになったのは良いことです。テレビ広告やデジタル広告を最適にする方法を知りたい方はお気軽にお問い合わせください。KANTARでは、メディアへの投資を最大限に活用するために柔軟にご提案させていただきます。
原文:https://www.kantar.com/inspiration/advertising-media/get-the-best-return-from-your-tv-and-digital-ad-campaigns
翻訳・編集:高橋なお , Media & Digital
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