視認性を超えたクリエイティブ戦略とは?──広告効果を最大化する“アテンション”の力


視認性のその先へ:クリエイティブ効果における「注意」の役割

広告効果を高める第一歩は「注意を引くこと」、特にデジタル領域ではそれが重要です。そして、どれだけ注意を引けるかを左右する最大の要因のひとつがクリエイティブの質であるため、開発プロセスの中で「注意」を包括的に測定することが不可欠です。

「注意」は記憶と密接に関係しています。見過ごされたものは記憶に残らないため、ブランドは消費者の心に残るために「注意の奪い合い」をしているのです。こうした重要性を背景に、広告業界では「注意の獲得と維持」にますます注目が集まっています。これは、クッキーを用いたターゲティングの制限や、「クリック数」や「視認性」だけでは測れない新たな「注意」の理解が進んでいることも要因です。

1890年に心理学者ウィリアム・ジェームズは「誰もが、“注意”が何かを知っている」と述べましたが、現在では「注意」はより複雑で、単一の定義では捉えきれない現象とされています。カンターでは、スタンフォード大学のKnudsenによる4つの基本プロセス(ワーキングメモリ、トップダウンの感度制御、ボトムアップの刺激選別、競合選択)を基にした、シンプルかつ包括的な定義を採用しています。


すべての「注意」が等しいわけではない

「注意」は単なる「ある/なし」ではありません。消費者がどれくらいの時間、どの程度の深さで、何に注意を向けているのかを理解することが重要です。これにより、広告主はクリエイティブの注意喚起力を最大化し、文脈や掲載面に応じた最適化が可能になります。

カンターのパートナーであるRealeyesのデータによると、広告フォーマットごとに「注意プロファイル」は異なります。たとえば、InstagramやTikTokのような短尺・フィード型フォーマットでは、注意の持続時間が短く、冒頭数秒でブランドを明確に提示する必要があります。一方、ストリーミング型フォーマットでは冒頭の注意は低いものの、時間とともに注意の減衰が緩やかです。

「注意」の新しい捉え方

広告の第一の役割は「視認されること」、次に「注意を引くこと」、そして最終的には「感情的な反応を引き起こすこと」です。カンターでは、広告再生中に視聴者が感情的に関与している時間を「アクティブ・アテンション(能動的注意)」と呼びます。

新しいアテンション・フレームワークでは、広告の再生状況、パッシブ・アテンション(受動的注意)、アクティブ・アテンションの関係を分析し、秒単位で注意が失われるポイントを特定します。これにより、視線が画面に向いている時間(パッシブ)と、感情的反応を伴う時間(アクティブ)の両面から、注意の深さを評価できます。

カンターでは10年以上にわたり、顔表情分析を用いて注意を測定してきました。近年では視線測定技術の進化により、より精度の高い測定が可能になっています。新しいフレームワークでは、視線の逸れ、発話、眠気など、低レベルの注意信号も捉えられるようになりました。


文脈によって異なる「注意」

カンターのパートナーであるAffectivaのデータによると、YouTubeやYoukuのようなインタラプティブな環境では、ソーシャルメディア(Facebook、Instagram、TikTok、Xなど)よりも視認性が高い傾向があります。一方で、ソーシャルメディアでは、視認された秒数あたりのパッシブ・アテンションの比率が高くなっています。これは、単なる視認性だけでなく、フォーマットやプラットフォームに応じた「注意時間」を考慮したクリエイティブ設計が必要であることを示しています。

アクティブ・アテンションに関しては、プラットフォーム間で大きな差は見られません。これは、アクティブ・アテンションが主にクリエイティブの内容に依存しているためと考えられます。


「注意」と「態度」の統合的理解

「注意」はクリエイティブ効果の重要なステップですが、それだけでは不十分です。広告のインパクトを測るには、態度指標と組み合わせて理解することが重要です。

カンターでは、Apple Payのデジタル広告「Dance」をLINK+でテストしました。この30秒のユーモラスな広告では、カード決済に苦戦する顧客と、Apple Payでスムーズに支払う顧客の対比が描かれます。

秒単位の注意分析では、冒頭から再生率とパッシブ・アテンションが低下しており、冒頭の注意喚起力が弱いことが示されました。視聴者の反応を引き出したのは、主に顧客とレジ係のやり取りといった共感できる場面でしたが、ブランド提示の場面では反応が薄れました。






このように、共感やユーモアが伝わる場面ではアクティブ・アテンションが高まり、Enjoyment(楽しさ)で上位25%、Ad Distinctiveness(広告の独自性)で上位30%という評価を得ました。ただし、ブランド提示のタイミングでは視聴が終了していたり、関心が薄れていたため、ブランド連想は弱い結果となりました。


カンターの強み

カンターは、5万件以上の広告に対する実際の注意データと、25万件以上の広告に対する態度調査データを保有する、世界最大級のノームデータベースを持つ企業です。新しいアテンション・フレームワークは、デジタル広告・TV広告向けのLINK+やContext Labという弊社独自のソリューションを利用することによって、効果を測ることが可能です。また、その結果によってどのようなアクションが必要なのか?の示唆も専門の経験豊富なリサーチャーより提案させていただきます。


より効果的なクリエイティブのために、ソリューションにご興味ありましたら、ぜひKantarにお問い合わせください。 



お知らせ

【ウェビナー開催】(無料)

“そのまま使いまわしていませんか? “

~ 媒体や文化の違いを飛び越え​広告クリエイティブの最適化を考える ~ 

日時: 7月31日(木)11:00~12:00


この度7月31日(木)11時より、クリエイティブ開発に関するウェビナーを実施いたします。
日本発の広告を海外展開する際に直面する文化的な違いや、グローバルに効果を発揮するクリエイティブ開発のポイントについて掘り下げていきます。

  • 広告を海外に展開したいマーケターの方におすすめ
  • 参加費無料・事前登録制
  • アーカイブ提供(登録者のみ)

関連記事