
ブランド体験が優れているブランドは、他よりもブランド価値の成長が速いです。日々提供する体験を通じて、どのようにブランドを構築するかをご紹介します。
カスタマーエクスペリエンス(CX)は価値創造の中心であり、特に危機の時代には、ブランドが顧客を守るためにより一層努力する必要があります。
Kantar BrandZのデータ(Kantarのブランドデータベース)によると、優れたCXを持つブランドは、そうでないブランドよりもブランド価値の成長率がはるかに高いことが示されています。しかし、Forresterの調査では、CXの専門家の半数未満しか、CXの変化がビジネスに与える影響を証明できていないと答えています。
Kantarの経験では、以下の4つの強力なステップを踏むことで、組織内でCXの重要性を高め、その戦略的価値を示すことができます。
1. 小さくても強力に – インパクトを証明して勢いをつける
「一発逆転」のような大規模な戦略的イニシアチブに取り組みたくなるかもしれませんが、こうした試みは失敗しやすく、CXプログラムへの信頼を損なうことがあります。大きな成果を目指すには、まずCXの成熟度を高める必要があります。
まずは、影響を与えられる領域を選び、収益の増加やコスト削減、顧客の獲得・維持、価値の向上といった成果を示しましょう。たとえば、あるグローバル小売業者と協力し、店舗体験に焦点を当てた結果、「フロントラインの親しみやすさモデル」を発見し、導入した店舗では売上が3倍になりました。また、あるクレジットカードブランドでは、特定機能の利用を妨げていた最大の要因を特定し、獲得から教育・活性化へと戦略を転換しました。
既知の課題を掘り下げ、顧客の体験から学び、何がインパクトを生むかを見極めて行動に移すことが重要です。そして、成果を測定し、関係者を「ヒーロー」にすることで、CXの支持者を増やしましょう。
2. 連携してより強力に – サイロをつなぎ、投資の優先順位を最適化
多くのプログラム(ブランド、広告効果、CX、従業員体験など)は独立して運用されています。そのため、経営陣が「どこに投資すべきか」を判断するのが難しくなります。
これらのサイロをつなぐことは困難ですが、非常に価値のある取り組みです。各タッチポイントやツールの影響度と重要性を把握することで、投資のROIを最大化できます。
たとえば、あるコーヒーブランドでは、棚での存在感が最も重要なタッチポイントであることが判明しましたが、競合よりも劣っていました。ソーシャルメディアやサンプリング戦略にもギャップがありました。TV広告と製品使用体験がカテゴリをリードしていたため、ブランドは投資の焦点を明確にできました。
3. 強力な指標 – 先行指標と遅行指標を理解する
「ビーコン指標(先行指標)」を知っていますか? これは、顧客離れや収益損失の兆候を早期に察知し、対処するための指標です。
多くの企業は、NPSのような遅行指標をKPIに設定していますが、NPSが変動したときに「なぜ?」と問われても、答えは曖昧で、数か月前の出来事に起因することが多いです。
先行指標は、KPIよりも先に動くため、問題を予測し、早期に対応できます。たとえば、従業員体験と顧客体験の相関、特定チャネルでの接触量、ソーシャルメディアや検索行動、価格変動などが先行指標になり得ます。
4. 記憶に残る体験 – 「意味のある差別化」でビジネス成果を加速
CXにおいて、リサーチやUXテストに従って「良い体験」を設計するだけでは、競合と同じような体験になってしまいます。感情的・機能的ニーズを満たすだけでなく、ブランド独自の「シグネチャー体験」が必要です。
「意味のあるブランド」は、消費者と明確で一貫した感情的なつながりを築き、ニーズに応える存在です。「差別化の力」は、他ブランドにはない価値を提供しているかどうかを示します。
どのCX要素を「差別化すべきか」、どこは「標準的でよいか」を明確にし、ブランド中心の視点も忘れずに持ちましょう。ある銀行では、「差別化された体験」を提供することで、特定の顧客離脱率を50%削減できました。
CX戦略を加速させるために
CX測定とビジネス成果の間には、いまだにギャップがあります。CX文化を根付かせ、変化を起こすには、長期的なコミットメントと多分野にわたるアプローチが必要です。
CX測定プログラムは始まりにすぎません。「傾聴」から「行動」へと移行し、未来志向で積極的にビジネス課題に取り組む必要があります。
CXリーダーとして、限られた予算で最大のインパクトを出すには? 日々の体験を通じて、どうブランドを差別化し、構築するか? そのためには、スポンサー、支援者、そして従来の測定を超えるツールキットを持つパートナーが必要です。それこそが、CXファクターを実現し、ビジネスを成長へと導く鍵となるのです。
Kantarでは、これらのステップにおいて、MDX(Meaningfully Different Experience:意義ある差別化の体験)フレームワークに基づき、顧客にとって意義があり、かつ他ブランドと明確に異なる体験を提供することで、ブランドが選ばれる理由を強化することを目的にしたソリューションなど多くそろえております。
お知らせ
#1:“顧客体験とブランド体験の進化”ウェビナーのご案内
6月27日(金)11:00~より、弊社では、このMDXに関するウェビナーを実施しております。
その概念や構成要素、導入によるメリットを解説や、さらにグローバル事例を交えながら、日本市場での活用可能性やCX戦略への応用方法を探っております。また、CXをどのようなKPIで評価すべきか、アクションにつなげるにはどうすればよいかといった実践的なヒントもご紹介しておりますので、ご興味のある方は下記より登録いただければ、動画視聴が可能です。
#2:“企業やブランドと消費者間の重要なアクションレバーを明らかにする“ウェビナーのご案内
また、2つ目のステップ(連携してより強力に – サイロをつなぎ、投資の優先順位を最適化)のタッチポイントの効果測定についても先日セミナーを実施いたしましたので下記よりご視聴いただけます。
こちらもご興味のある方はご登録くださいませ。