関税の影響で経済の不確実性が高まる中、未来を完全にコントロールすることはできないが、最善を尽くすことはできる

現在の経済情勢では関税をめぐる争いが続いており、株式市場の変動が不確実で不安定な環境を企業に作り出しています。さらに、世界的な景気後退の可能性の可能性もあるため、今後、消費者の購買行動にも大きな影響が出ることが考えられます。
しかし、ブランドの運命や行く末をある程度はコントロールすることができます。この激動の時代を乗り越え、ブランドを顧客にとって信頼できる存在にするための戦略をここで紹介します。これから世界中の消費者がこうした事態にどのように反応していくかについて調査を行い公表していく予定ですが、まずは手始めとして「将来に備えるための行動」について考えてみます。
1. 前提条件を整理する:
- 直面している課題を正確に把握することが重要です。コストが上昇している場合、特定のブランドや製品は自由裁量支出(余裕がある時に使われる費用)的な側面を強くするかもしれません。例えば、高級車市場でアメリカに高級車を輸入しているような場合、競合の他の高級車ブランドも同じようにアメリカ外から輸入しており、同じ問題に直面していることになります。このように市場状況を正しく理解することが重要であり、まず市場の競合関係構造を把握し、その中で自社ブランドの立ち位置を明確に理解しておく必要があります。
2. 顧客へ語り続ける:
- ブランド エクイティへの投資は、良い時であっても悪い時であっても、必要不可欠なものです。一時的に“沈黙”をして出費を抑えたいと思うかもしれませんが、 Kantarの調査によると 、広告費を減してしまうと売上の回復にかかる期間が有意に長くなってしまいます。特に(売上予測モデルの基盤となる)認知度やベースセールスが損なわれてしまい、その回復により多くの時間(と費用)がかかってしまうことがわかっています。自社ブランドが消費者の感情的および機能的なニーズをどれ位充たしているかを理解しているでしょうか?あるいは、競合他社とはどの程度違っているかを理解しているでしょうか?こうしたことが理解できていれば、あなたのブランドは経済的な不確実性から抜け出しやすい立場にいることになり、しかもそれをより迅速かつパワフルに行うことが出来ます。
3. “プライシングパワー”を把握する:
- プライシングパワーとは「消費者により高い価値を感じさせる力」であり、関税が市場に課されたときの利益率に影響を与えます。ブランドが強いプライシングパワーを持っていることで、消費者は値段の安さだけで代替品に流れにくくなります。つまり、ブランドが高価であっても消費者はそれを選び続ける可能性が高いということです。プライシングパワーと価格弾力性の相関関係も証明されています。それ故、すぐに値引きを選択する誘惑に駆られないようにしてください。常に値引きプロモーションを続けることは難しく、多くの製品カテゴリでは悪影響を及ぼす可能性があります。
4. メッセージを重視する:
- ブランドの価値がどのように提示されているか、それがコミュニケーションを通じてどのように伝えられているかを見直して見ましょう。仮に衣料品ブランドで競合が海外において低コストで生産されていることが判明した場合、ブランドの評判に悪影響を与える可能性があります。そのような時は、自ブランドではサステナビリティのメッセージを強化して、競合との違いをアピールすることが可能です。
5. ブランドの新しい「伸びしろ」を見つける:
- ブランド、市場、顧客を新しい視点で評価してみて、「どれだけ違ったアプローチをとることができるだろうか?」と自問自答してみます。競争優位性を持てる新しい市場や未開拓のターゲット層を見つけることが出来るかもしれません。ブランドがすでに出来上がっていて確立しているのであれば、製品の新しいバリエーションを開発したり、新しいカテゴリに進出するための「イノベーション」が必要かもしれません。
こうした意思決定は、ビジネスが直面している不確実性とそれがブランドに与える影響力によって左右されます。現在、関税問題が市場に与える影響を考える上で、自ブランドが何をすべきかについては、米国に拠点を置くグローバルブランドなのか、米国以外のグローバルブランドなのか、他市場のローカルブランドなのか、によって取るべきアクションは異なります。各シナリオにおける課題と機会が異なるからです。当地での関税によって、他市場でのマーケティングの方に重点をおき替えるべきでしょうか、それとも当地でもっとブランドの資産となる強みを強化すべきでしょうか?
優れたデータを使うことで消費者の行動や考え方を理解することができます。これにより、戦略的な決定を情報に基づいて行い、誤った決断を避けることができます。市場の理解、ブランドの価値、顧客体験、クリエイティブやメディアの効果、イノベーションなど、どれをとってもブランドが無謀な賭けをする余裕はありません。
インサイトとデータサイエンスはマーケターが消費者がどのように考え、感じているかを理解するのに常に役立ちます。更に、重要な戦略的意思決定を行い、その結果を予測するのにも役立ちます。このような不確実性の時代であれば尚更のことです。
Kantarのエキスパートが、お客様のブランドが嵐を乗り切るためにどのような支援ができるかについては、下記よりお問い合わせください。