マーケターは、人々とつながり続けるために広告を頻繁に変える必要があるのでしょうか、それとも広告には長期にわたって届ける持続力があるのでしょうか。常にマーケティング予算が逼迫している中、マーケターはギアを切り替えるタイミングと、一貫性を損なうことなく進化させる方法について理解する必要があります。
広告には有効期限があるのでしょうか、それとも、広告に慣れると有効期限が切れるのでしょうか
カンターのトラッキング・データは、広告の掲載期間が広告のパフォーマンスに明らかに影響を与えないことを示しています。TV広告において1回目の投下の山と2回目の投下の山を比較すると、約3分の1の広告ではパフォーマンスに変化が見られず、約3分の1が低下し、残りの3分の1には増加が見られました。このことから分かるのは、広告の摩耗は避けられない宿命ではなく、成功を維持できる強力な広告制作が可能であるということです。
今年の Kantar Creative Effects Awards 受賞広告の1 つであるトワイニングの「Tealand」は、クリエイティブ表現の持続力を示す好例です。このクリエイティブは、ほぼ 10 年間にわたって効果を維持しました。この広告は「不思議の国のアリス」という永遠のテーマを通じてビジュアル・ストーリーテリングをうまく用い、現実逃避的で幻想的な旅は、今もなお語り継がれています。受賞したクリエイティブ、「Tealand」はチリでつくられたものですが、長い成功の歴史があります。
Tealandのオリジナルのクリエイティブはヨーロッパで最初に発表されたために、時間だけでなく地理的にも成功を勝ち得た広告です。 最初のテストから10年近くが経過した現在でも、この広告の楽しめる程度と独自性は変わらず、ブランド・エクイティへの貢献力が非常に高いことが、デマンド・パワーに寄与するスコアの測定データによって示されています。ブランドが何年も1つの広告を掲載することは稀かもしれませんが、今回の事例は、強力な広告は必ずしも摩耗しないことを示しています。
急速に変化する世界において、デジタル広告は輝きを失うのでしょうか
テレビ広告には目に見える摩耗パターンはありませんが、デジタル広告が楽しまれる程度については少し状況が異なるようです。カンターの広告トラッキング・データによると、1回目の広告投下の山と2回目の広告投下の山において、楽しまれる程度が変化しなかったデジタル広告はわずか6%であり、半数以上が楽しめなくなりました。 ソーシャルメディアのトレンドが目まぐるしく変化し、ブランド発信のコンテンツと消費者発信のコンテンツが同じエンターテインメントの土俵で競い合うことを考えれば、デジタル広告が楽しめなくなるのは驚くべきことではありません。しかし、説得力指標(購入検討に影響を与える広告の能力を測定する指標)の変化の割合は、テレビ広告と同様で、3分の1は変化がなく、3分の1は減少しました。したがって、デジタル広告がある一定期間が過ぎると、楽しめなくなるのは当然予想されることかもしれませんが、効果の全てがすぐに失われるわけではありません。
新しいクリエイティブへの移行はいつが適切なのでしょうか
リフレッシュされた(あるいは新しい)メッセージを含む新しい広告は既存の広告よりも効果があるでしょうか。また、効果の向上は広告制作コストに見合ったものになるのでしょうか。 新しい広告に移行する前に、新しい広告で一体何をしたいのかを見極めることが重要です。目的を明確にし、クリエイティブがその目的を達成できるかどうかを理解することがすべてです。 既存の広告を使用して時間が経ったからといって、それが自動的に目的とする成果を出さなくなるということではないのです。最終的には、データに基づいて意思決定がなされるべきです。
クリエイティブの質はマーケターの最大の味方であり、うまくいけば長期ブランド貢献力への投資であることは明らかです。しかし、併せてメディアプランニングも重要です。クリエイティブの質の高さが時間の経過に打ち勝つ可能性はありますが、広告への過剰接触によって嫌悪されるリスクを避けつつ、適度にリマインドするためのフリークエンシーのスイートスポットを見つける必要性も忘れてはいけません。メディア出稿量が短期間に飽和することで、広告が摩耗しているような印象を与えることもあります。しかし、そのような場合、見直す必要があるのは特定の施策の有効性ではなく、メディアバイイング戦略かもしれません。カンターのソリューションであるCrossMediaは、メディアを横断して行うキャンペーンのリーチ、フリークエンシー、オーディエンス属性に関する分析を提供し、支援いたします。
キャンペーンに有益な時間の使い方
核となるアイデアやテーマとブランドを消費者が頭の中で関連づけるようになるには、ある程度の時間を要します。カンターのLinkデータベースに登録されている既存キャンペーンを継続している広告は、新しいキャンペーンとして開始された広告と比べて、ブランディング指標が強固です。私たちの結論は、一貫したコミュニケーションを続けることは、ブランドパーソナリティを確立する際において、成功の鍵であるということです。ブランドのDNAを伝えるキャンペーンの構築は、マーケティング効果を高める重要な原動力のひとつです。異なるクリエイティブを開発しても、独自性をもつブランド資産と向き合うことが、ブランドの本質を伝えるための有効な手段です。
一貫性とは、新しいコミュニケーションのたびに同じクリエイティブ表現手法を繰り返す必要があるという意味ではありません。新しいキャンペーンを通じて一貫性を保つことと、新鮮なコンテンツを開発することは相反するものではありません。Marmiteはそれをうまくやっているブランドのひとつです。2013年に放映された象徴的でユーモラスな「Rescue」や、今年放映された、より感情的で心温まるストーリーの「Baby scan」などのブランドの広告は、さまざま感情のトーンや異なるストーリーをみることができます。よく知られているコア・アイデア「Love it or hate it(好きか嫌いか)」は、ブランドのすべてのコミュニケーションにおいて一貫しており、時間と施策を通じて独自性をもつブランド資産にコミットできることを示しています。時間は必ずしも広告を摩耗させる敵ではなく、ブランドを確立する味方にもなり得ます。
マーケターが知っておくべき消費者とつながり続ける強力なクリエイティブの3つのポイント
- 時間の経過は、別のクリエイティブ開発に移行する十分な理由にはなりません。マーケターは、新しい表現開発に投資する前に、自社のニーズと目標を見極めたうえで、テストを通じて現在のキャンペーンの有効性の再評価を検討すべきです。
- クリエイティブの質はインパクトの主要な牽引力。メディアプランニングを活用して過飽和を防ぎます。質の高いクリエイティブは、長く提供し続けられる可能性を秘めています。一方で、広告が摩耗する印象を与える可能性があるためメディアバイイング戦略をうまく計画することも重要です。
- 一貫性が重要であり、キャンペーンはブランドの核になる連想と一貫性を保ちながら進化させることができます。独自性をもつブランド資産を確立するには時間がかかり、一貫性が鍵となります。新しいクリエイティブ開発に移行するときであっても、マーケティングの成功のためにはブランドの本質に向き合うことが重要です。
原文:https://www.kantar.com/inspiration/advertising-media/the-art-of-creating-ads-that-last
カンターは、市場での広告浸透と広告の質的評価を通じて今後のキャンペーンについての素早い意思決定を支援する「BrandCampaign」や、マルチメディアキャンペーンを包括的に効果測定して、リーチ&フリークエンシー、態度変容効果、投資効率の観点から予算配分やメディアプランでの示唆を得る「CrossMedia」を提供しています。詳細については下記よりお問い合わせください。