カンターはオックスフォード大学のサイード・ビジネス・スクールと提携し、BrandZデータベースから、何を戦略的な重要指標としてブランド構築活動をすると良いかを特定し、ブランドによるビジネスリターンが最大化される方法について新たなインサイトを明らかにしました。
ブランドは非常に面白いものです。一方で、今やブランド黄金時代です。ブランドが短期的にも長期的にも企業にもたらす競争上の優位性を実証する知識がこれほど多く得られたことはありません。そして、エーレンバーグ・バス研究所のおかげで、顧客浸透率の観点での成長を促す上では、リーチと想起性が重要性であることが証明されました。
しかし、こうした既存の成長モデルだけでは、ブランドが収益にもたらす貢献のすべてを説明するにはまだ不十分であり、また、実現するにはどうすればよいか説明するには不十分であるというのも事実です。なぜならば
- デジタルでつながった経済では、体験とイノベーションを通じて、ブランド価値を変革することができます
- 広告によるセールス反応が以前に比べて半分に減少しています
昨今のインフレによって、ブランドが成功するにはセールスボリュームだけでなく、プライシングパワー(高値行使力)と利ざやが重要であるとわかっており、その傾向が増しています
今こそ、発想の転換をする時です。
Kantar BrandZがブランド分析を飛躍的進歩させる
BrandZは、420万人の消費者インタビューに基づき、52市場、21,000以上のブランドを対象としたブランド評価エンジンであり、ブランドエクイティのビジネス貢献を評価します。これらはブランドの3つの核となる上位エクイティ因子が下支えしています。
意義性: カテゴリーにおいて機能的・情緒的なニーズを適切に満たすこと
差別性: ユニークであり、かつ先進的で道を切り開くこと
想起性: ブランド選択をする際に、すぐに思い浮かぶこと
カンヌ ライオンズ 2023 でのプレゼンテーションの 1 つとして、私たちは、デジタルでつながった経済におけるブランドのビジネス貢献再考に役立てるために、この膨大なデータセットを 2つの方法でテストしました。
- オックスフォード大学のサイード・ビジネス・スクールと提携した先駆的な研究で、異常な株価収益をもたらす重要なブランドエクイティ要因をモデル化し、エクイティ要因の相対的重要性について調査しました。
- 私たちはBrandZのデータを用いて、世界的に「ブレークスルーを起こしたブランド」(つまり近年ブランド価値が急速に成長しているブランド)と他のブランドは何が違うのかを特定しました。
これらの分析により、ブランドが商業的利益をどのように最大化するか、また、効果を最大化するためにどの戦略的手段に焦点を当てるべきかについての新しいインサイトを明らかにしています。
差別性で差がつく
オックスフォード大学のサイード・ビジネス・スクールは、ブランドエクイティの株価成長への貢献を分析するために2006年から2022年の間に複数のカテゴリーにまたがる872ブランドの財務実績に基づいて高度なモデルを構築し、カンターBrandZで用いられるエクイティ指標が株価を上回るパフォーマンスにどれだけ貢献しているかを発表しました。また、ブランドエクイティ変数を含むモデルの精度は99%以上であり、財務データのみを使用したモデルと比較して大きな進歩が見られました。
この研究は3つのことを示しています:
- 差別性は優れた株価パフォーマンスを説明するエクイティ要因第1位(企業責任は第3位)
- 差別性の業績へのブランドインパクトは35%を占めるが、想起性はたったの0.6%
- 差別性の重要性は時間の経過とともに増加し、想起性は減少している
この研究結果は、ブランドの間には差別性が存在しない、もしくはそれほど重要でないという主張が間違いであることを表しています。消費者はそのことを認識しており、株価が期待を超えるパフォーマンスをもたらす上で重要な要素です。
差別性は株価のパフォーマンスを左右する最も重要なブランド要素である
いかにして差別性が差を生むのか
Kantar BrandZ の追加分析では、「ブレークスルー」したブランドを特定し、何がそれらを他と隔てているのかを検証しています。これらのブランドは、カンターBrandZの「最も価値あるグローバルブランド」の中で、新たにランク入りするか、急成長を果たしたブランド(前年比5%増)です。
したがって、小規模なスタートアップ企業ではないです。「ブレークスルー」といえるほどのダイナミックな成長の勢いを見せており、かつ、他が追随したくなるほど先駆的なことをしている大きなブランドです。この分析はブランドのビジネスインパクトを底上げする上で最も重要な要素を明らかにします。
どんなブランドでも「ブレークスルー」ブランドになり得ることを分析が示しています。あらゆるカテゴリー、あらゆる成熟度などさまざまなものが当てはまり、例えば、KFC、Chipotle、Lululemon、Tesla、Aldi、Uniqlo、TikTok、Airbnb、そしてカンターBrandZの最も価値のあるグローバルブランドNo.1のAppleといったブランドが挙げられます。
では、これらのブランドは何が違うのだろうか?
一言でいえば 「差別性」です。競合他社とは十分に異なっていると見られ、そして経験されます。差異は驚異的な成長の原動力となります。これはMini-MBA教授でマーケティングウィークのコラムニストであるマーク・リットソンとの最近のインタビューでも議論されましたが、かつてはそれほど大きな要素ではありませんでした。
ブレークスルーブランドには差別性が備わっている
ブランドサイズの影響を取り除くことで、差別性の “真の力”がわかります。私たちはカンターBrandZのデータベース分析で3~4年間に市場シェアを伸ばしたブランドを特定し、ブランド規模に対するエクイティポジションのスタート地点とシェア拡大の可能性を比較しました。これにより、どの因子を超過と呼べるレベルで保持することが、その規模から予想される以上の成長を支えているのかが浮き彫りになりました。
分析によると、「超過した」意義性や想起性を持つブランドには成長の可能性がわずかしかありませんでした。対照的に「超過した」差別性からスタートすると、成長の可能性が大幅に高まりました。 そして差別性が強ければ強いほど、成長の可能性は増大しました。
「超過した」差が強力な成長をもたらす
特に重要なこととして、私たちの分析結果は、なぜ差別性が株価での優れたパフォーマンスの鍵となるかを示しています。それは、「より多くの対価を払う価値がある」というパーセプションを作るうえで鍵となる因子だからです。その結果、ブランドの価格競争力とマージンが強化されます。実際、差別性はプライシングパワー(高値行使力)の原動力になっています。意義性と差別性は併せるとプライシングパワーの94%を占め、想起性はわずか6%です。
プライシングパワーは直接的に利益に影響を与えるため、大きなビジネス成長のアドバンテージとなります:マッキンゼーの報告によると、価格を1%上げると営業利益は8%改善し、これは販売量を1%増加によってもたらされる利益増加の3倍に相当します。
また、意義性ある差別性は想起性よりも将来の販売を推進する強力な要因であり、得られた利益をより深く一貫して事業に再投資していくための保護されたキャッシュフローをブランドの周りに構築します。この力学はブランドバリューチェーンに要約できます。つまり、デマンドパワー(販売量)は意義性と想起性、プライシングパワー(販売額/マージン)は意義性と差別性によってもたらされます。
これが意味するのは、メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティは重要ではあるものの、それだけでは十分ではないということです。ブランドを通じたビジネス成長をなし遂げるには、知覚された差別性を倍増させ、プライシングパワー(高値行使力)と潜在的な利益を強化することが必要です。そして、インフレ時代の今、成功のためにこれほど重要なことはありません。
どのように日々の業務で実現させるか?
差別性に関する因子分析では、ブランドの記憶形成に関連する有形無形の要因の総量がどのように差別性が生み出すのかを明らかにしています。特徴的なブランド資産(色、フォント、スローガン、文字など)は確実に影響しており、差別性の30%を占めています。しかし、差別性の大部分(70%以上)は、ポジショニング、製品体験、サービスのデザイン、広告関連、取扱製品関連、責任などその他の目に見えない要素から生み出されます。
差別性のDNA:特徴的な資産では十分ではない
各要素は心の中の感覚的なつながりを刺激し、ブランドへの態度を高めます。これにより、人々は購入したり、プレミアム対価に支払い、さらに体験を楽しみ、競合他社にスイッチする可能性が低くなります。ここでの示唆は、特徴的なブランド資産の継続的な利用は価値があるものの、それだけでは十分ではないということです。
ジェレミー・ブルモアは『ブランドとは、鳥が巣を作るように、偶然見つけた廃品や藁から作られるもの』と述べています。言い換えれば、ブランドは視覚的だけでなく感情的な整合性によってつくられており、ブランドが行うすべてが、ある程度のレベルで暗にもしくは明白に伝えられています。これらが一体となって「優れている」感覚と質の高いブランドリーダーを生み出します。
ブレークスルー・ブランドの分析は、差別性をデザインすることによって、これが実際にどのように達成されるかを示しています。成長の勢いはたゆまぬクリエイティブなリーダーシップスタイルから生まれています。また、クリエイティブで強い勢いがあるため「揺さぶりをかけている」と見なされるようになります。
「ブレークスルーブランド」のリーダーたちが、彼らのマーケティングアプローチを説明するとき、共通したことを言及しています。明確で説得力のあるポジションから始め、強く感情的なコミュニケーションで増幅させ、意義のある差別性をもつイノベーションと製品・サービス体験を通して強固にしていくというアプローチです。
バイロン・シャープが言う「意義がない独自性」とは対照的に、彼らはあらゆるマーケティング活動に意義のある差別性を持たせるという目的意識を強く持っています。二つの例がそれを物語っています。一つ目はAppleです。BrandZの世界最大のブランドの差別性は、他のブランドと2倍の開きがあります。
Appleが差別性のある企業だと認識されるようになったのは、感情に訴えかける優れた広告だけでなく、ユニークな小売り体験やフラッグシップモデルであるiPhoneやAirPod Proに一貫して採用されている強力なイノベーションが、ユーザーに有用性を提供する生態系として結びついているからです。
明確性と一貫性
全く異なる例として、+5の「超過した」差別性と共に強力的なブランドエクイティを持つ製菓ブランドのキャドバリーが挙げられます。彼らの成功の基盤となったのは、カンターとの協働を通して強力な感情的競争力を持つブランドテリトリーを「寛大さ」として定義したことです。それは、「‘there’s a glass and a half inside everyone’ 誰の中にも1 杯半分のグラスがある」というコミュニケーションプラットフォームのもと5 年以上にわたり一貫して表現されてきました。
この明確性と一貫性はクリエイティブという感情を揺さぶる魔法の強力な柱となり、愛する人にチョコレートバーを贈ることを伝える広告「シークレットサンタ」は、カンタークリスマスキャンペーン・オブ・ザ・イヤー2022を受賞しました。また、ビジネスに利益をもたらし、IPA Effectiveness Awards 2022グランプリ受賞にもつながりました。
いうなれば、ストーリーを語るのではなく、ストーリーを行うのです。他の人が一方向に動くとき、反対の方向へ動くのです。
「他の人がやっていないことをやり、それを一貫してやり続ける」
ジョン マッカーシー, キャドバリー,ブランド・グローバル・ヘッド
ブランド成長のために発想の転換を行う
したがって、分析から得られた 3つの重要な教訓は次のとおりです。
- メンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティだけでは十分ではない–差別性で差が付き、特にプライシングパワー(高値行使力)と株価に影響を与えます。
- 特徴的なブランド資産だけでは十分ではない–Appleやキャドバリーのようなブレークスルーブランドがそうであるように、戦略、コミュニケーション、体験、イノベーションなどすべてのマーケティングプロセスでクリエイティブの力を解き放ち、差別性が生み出されるようにすることが重要です。
- 競合他社に対して相対的に超過した差別性を作ることに焦点を当てる– 差別性が強ければ強いほど、ブランドの競争力は高まります。
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