マーケターがTikTokから学べること ― TikTok × 音楽:ブランディングのための効果的な方法

KANTARのMedia Reaction 2022でも明らかになったように、近年は音メディアが注目を集めています。さらに同調査で消費者の間で2番目、マーケターの間では4番目に好まれたメディアはTikTokで、このプラットフォーム体験の中心となっているのが「音楽」です。この記事では、TikTok × 音楽にフォーカスしながら、それらをいかに効果的かつ効率的なブランド構築に役立てられるかをご紹介します。


音楽は、心を揺さぶり、感情に訴え、時には強い感情を伝えるものであり、TikTokerがコンテンツを通じてオーディエンスと情緒的にエンゲージするための重要な方法となっています。では、マーケターはここから何を学び、いかにTikTok上の音楽を通じて、より効果的にオーディエンスの共感を得ることができるのでしょうか?

音楽の力を知る

2016年のサービス開始以来、eMarketerの推定によると、TikTokのユーザー数は現在8億4,300万人に昇り、2019年から2021年の間にユーザー数は2倍以上に増加しています。このような驚異的な成長により、TikTokは現在、コンテンツを見る・作る人々からなる巨大なオーディエンスを抱えていることを意味します。インフルエンサーやクリエイターの新世代とされるTikTokerもこのプラットフォームで誕生しています。

このようなブームの背景にあるTikTokの他には無い特徴として、TikTokと音楽の関係が挙げられます。TikTokは、音楽のプロモーションと配信にSoundOnを提供し、音楽を発見するためのプラットフォームとなり、ファンがお気に入りのアーティストと交流できる場としても機能しています。また、昔人気だった懐かしの曲がTikTok上で「復活」する現象が起こっており、日本では「ロマンスの神様」などの昭和・平成の名曲がTikTokで話題となりました。KANTARの調査では、サウンドや音楽がTikTokの視聴体験をいかに好意的に高めるかがわかっており、音楽が好意的に受け取られれば、スクロールで飛ばされず、創造性が刺激されます。このようなダイナミクスの多くは、音楽と共に掻き立てられる感情と関係しています。

ブランドに合った音楽を選ぶ

では、その音楽と感情の関係性をより深く見ていきましょう。ユーザーはTikTokを使用する際、幸福感、興奮、懐かしさ、悲しみ、怒り、面白さ等、様々な感情を持ち、TikTokerは、このような感情を表現するためにコンテンツに音楽を用います。例えば、怒りや攻撃的な音楽は怒りやフラストレーションを呼び起こしますが、ユーモアが溢れる曲調の音楽は明るい感情や楽しい感情を呼び起こします。

このようなTikTokでの音楽と感情の関係を探るのに、心理学に基づいたKANTARのNeedScopeによる情緒フレームワークが役立ちます。一般的に、私たちはその時々の気分に合わせた、あるいは気分を変える音楽を探します。元気づけられるような曲を聴きたい時もあれば、ただ単にリラックスしたい時もあり、あるいは、心を揺さぶられるような、何かユニークなもの・こだわったものを探すこともあります。このようなダイナミクスが、以下の大きく6つの感情的欲求状態にわけられ、KANTARのNeedScopeフレームワークの基礎となっています。

NeedScopeミュージックモデル



NeedScopeミュージックモデルでは、リズム、テンポ、ピッチ、トーン、アレンジメント、歌詞のトーン、メロディーなど、その音楽の投稿自体の性質を分析し、その音楽によって呼び起こされる感情を特定します。

このNeedScopeを使い、TikTok上での音楽を分析するため、過去1年間にTikTokで最も人気のあった50曲を、NeedScopeのポジショニングマップにプロットしました。下記がその結果です。


NeedScopeによるTikTok上の音楽のポジショニング 


見方としては、円の外側にプロットされるとより各色の特徴が立っていて、内側だと特徴がはっきりしないということになります。ご覧の通り、多くが外側のいずれかのスペースにプロットされているか隣接しており、どの特徴も際立っていることが分かり、TikTokで使われている音楽は、NeedScope上で表現されているそれぞれの感情(色)の特徴がはっきりしている傾向が見られました。

その中でもTikTokの音楽は、特にアップテンポな曲が多い黄(楽しい/エンタメ/セクシー)~橙(明るい/フレンドリー)に偏っている傾向がありました。それに比べて、より主張の強い青、紫、赤の感情におちる曲は少数派でした。そのため、TikTokでは、黄色の特徴を持ち合わせた音楽が主流と言え、陽気で明るく、活気に満ちており、アップテンポでスピーディーなカットの多いTikTokと合っていると言えます。


ちなみに、それぞれの色の特徴を持った音楽の例を挙げると:

黄:LISA – ‘MONEY’

茶:WILLIS – ‘I Think I Like When It Rains’

紫:ThxSoMch – ‘SPIT IN MY FACE!’


黄色は高エネルギーですし、茶色はよりゆったりとした雰囲気で、紫色はより力強くはっきりとしています。

今やTikTokで人気の曲が、今流行りの曲となっているため、その人気の曲をコンテンツ作成時に選ぶことで視聴者の共感を得やすくなります。

さらに、音楽以外の影響はどうでしょうか。

プラットフォームの特徴に合ったコンテンツを

音楽の他にプラットフォーム自体の特徴もそのコンテンツ体験に一役買っています。前述のKANTAR Media Reactions 2022によると、プラットフォームブランドとしてのTikTokには、他と比較してはっきりとしたイメージを持たれており、それは「楽しさ」や「遊び心」と表現されるような黄色の特徴です。このような特徴は、そのプラットフォーム上で提供される感情的な背景を設定し、さらにはそのプラットフォーム体験で期待するものにも影響します。このような現象は、TikTokに限らずどのプラットフォームにも存在し、それぞれのプラットフォームを使う上での「マインドセット」にも関係し、音楽もその一部となります。

ブランドパーソナリティ ― デジタルチャンネル


TikTok自体が「愉快な、陽気な」という要素を持ち合わせたブランドであることを考えると、高エネルギーで楽しくユーモラスな音楽スタイル(黄)がこのプラットフォームでフィットしていることもうなずけます。TikTokクリエイターは、このことを直感的に認識していますし、また、TikTokで他の色の感情的特徴があまり表現されない理由も、このプラットフォーム自体の特徴にあります。

こうしたことから、ブランディングのためのコンテンツ制作において、特にTikTokで音楽を選ぶ際は、そのプラットフォームの特徴に合わせたコンテンツを配信する必要があります。

マーケターがTikTokから学べる3つのヒント

ここまで、音楽やそのから沸く感情、TikTok上の音楽の特徴、またTikTokのブランドパーソナリティーを見てきましたが、以下にテイクアウェイをまとめます。

  1. TikTokで心を揺さぶるための「音楽」の力を知る:特定の感情を呼び起こし、消費者の心を動かすためのブランドコンテンツを制作する際、選曲は核となる要素です。

  2. TikTokで主流の音楽の特徴を活かす:高エネルギー、楽しさ、ユーモラスといった特徴を持つ音楽スタイルがTikTok上で特に効果的です。さらに、このようなスタイルが自社のブランドに合うかどうかも併せて検討する必要があります。

  3. ブランドのポジショニングに沿った音楽を選択する:最終的には、ブランドの合った音楽を選び、かつそれがTikTokの文脈(=コンテクスト)で受け入れられるような関連性・意義性を持たせることが重要です。

コンテンツや広告がそのプラットフォームに即したものかを確かめましょう。

KANTARではTikTokをはじめとするデジタル広告の効果を最大化するための調査ソリューション及び、知見を提供します。

同じデジタル広告でも、プラットフォーム(=コンテキスト)が変わると、その効果や最適なクリエイティブが変わってきます。KANTARのデジタル広告効果測定ソリューション『Context Lab(コンテキスト・ラボ)』は、コンテキストが異なるメディアやメニューの中で、どのコンテンツがブランドに「効果」と「効率」をもたらすのかを測定します。広告素材とメディアコンテキストの相性を踏まえて効果を測定することで、効率的なメディア投資を行って、広告キャンペーンの効果を最大化するのにお役立ていただけます。



原文:https://www.kantar.com/inspiration/brands/what-can-marketers-learn-from-tiktok?utm_source=linkedin&utm_medium=social
翻訳・編集:高橋なお , Media & Digital

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