変化の速い市場で選ばれるブランドをつくるには?―成長につながるイノベーションの6つの考え方

ニッキー・モーリー

グローバルイノベーションリード

新しさだけでは、ブランドは選ばれ続けない

AIの進化、生活者の価値観の変化、SNSやカルチャーの広がりによって、市場はこれまで以上に速く動いています。その一方で、多くの企業が「競合との違いが伝わりにくい」「新しい施策を出しても一時的な話題で終わってしまう」という課題に直面しています。

Kantar BrandZは、世界中のブランド価値や生活者からの評価を長年にわたり分析している調査データベースです。その分析から見えてくるのは、成長を続けるブランドほど、生活者にとって意味があり、競合とは違う強みを持っているということです。Kantarではこれを「意義のある差別性」と呼んでいます。

イノベーションは、その「意義のある差別性」を商品、サービス、体験として具体化するための手段です。ただし、単に新しいことをすればよいわけではありません。生活者が今何を求めているのかを理解し、ブランドの強みと結びつけながら、新しい価値として届けることが重要です。本記事では、変化の激しい時代にブランドを成長させるために押さえておきたい6つの考え方を紹介します。

1.新しさを目的にしない

新商品や最新技術は注目を集めます。しかし、それがブランドの価値や選ばれる理由につながらなければ、効果は長続きしません。大切なのは「どれだけ新しいか」ではなく、「その新しさがブランドの強みをどう高めるか」です。

たとえばオレオは、新商品やコラボレーションを積極的に展開していますが、その多くは「遊び心」というブランドの核と結びついています。話題づくりで終わらせず、ブランドらしさを強めることが、長く選ばれるためのイノベーションにつながります。

2.ブランドの強みを土台にする

すべてのブランドが、いきなり大胆な変革に挑戦できるわけではありません。まず必要なのは、生活者にとっての価値や、競合と違う強みが明確であることです。BrandZの分析でも、「意義性」と「差別性」が高いブランドほど、新しい取り組みを成長につなげやすい傾向が見られます。

Kantarの調査によると、より多くの人にとって「意義のある差別性」を持つブランドは、そうでないブランドに比べて5倍高い市場浸透率を実現し、今後2年間の成長においても優位に立つことが分かっています。

ダヴはその代表例です。社会的なメッセージや商品展開を進化させながらも、「一人ひとりの美しさを肯定する」というブランドらしさを維持しています。イノベーションは、ブランドの本質から離れるためではなく、その価値を新しい形で伝えるための手段です。

3.生活者にとっての意味と、競合との違いを明確にする

イノベーションは、ブランドと切り離して考えるものではありません。新しい商品やサービスを出す前に、「それは生活者にとってどんな意味があるのか」「競合とどう違うのか」を明確にする必要があります。Cloroxは、機能的な価値だけでなく、安心感という心理的な価値も高めることでブランド力を強化しています。優れたイノベーションは、「何が新しいか」ではなく、「なぜそのブランドが選ばれるのか」を強くします。

4.市場データだけでなく、生活者とカルチャーの変化を見る

競合の商品や市場シェアを見るだけでは、次の成長機会を見つけにくくなっています。生活者が何に関心を持ち、どのような価値観で選び、どんな体験を求めているのか。その変化を理解することが、差別化の出発点になります。カテゴリーの常識だけで考えるのではなく、人々の暮らしやカルチャーの動きに目を向けることで、新しい商品、サービス、コミュニケーションのヒントが見えてきます。

5.AIは目的ではなく、より良い体験のために使う

AIを活用する企業は増えています。しかし、重要なのはAIを使うこと自体ではありません。生活者のどんな不便や不安を減らせるのか、どんな意思決定を助けられるのかを考えることです。

Trip.comでは、AIが旅行中の選択や手配を支援し、利用者の負担を減らす場面で価値を生み出しています。生活者が求めているのは「AIらしさ」ではなく、自分にとって役に立つ体験です。テクノロジーは目的ではなく、ブランドの価値をより分かりやすく、便利に届けるための手段として設計することが重要です。

6.変化しても、自社らしさを失わない

ブランドは、時代や生活者の変化に合わせて進化する必要があります。しかし、変わることだけを優先すると、ブランドの印象があいまいになり、選ばれる理由が弱くなってしまいます。成長を続けるブランドは、新しい体験や利用シーンに挑戦しながらも、自社ならではの価値や強みを一貫して届けています。

成長するブランドは、生活者にとっての価値を新しい形で届けている

カルチャーやテクノロジーの変化に対応するには、単に新しい話題を追いかけるだけでは不十分です。大切なのは、自社ブランドが生活者にどのような価値を提供できるのか、競合と何が違うのかを明確にし、その強みを新しい商品、サービス、体験に反映することです。成長を続けるブランドは、変化に合わせて進化しながらも、自社らしさを失っていません。

KantarのMDS(Meaningful・Different・Salient)は、ブランドが「生活者にとって意味があるか」「競合と違う強みがあるか」「購買や選択の場面で思い出されるか」を測定する考え方です。自社ブランドの強みや弱みを明確にしたい、競合との差別化ポイントを整理したい、新しい商品・サービスの方向性を検証したい場合は、Kantarにご相談ください。生活者データとブランド分析をもとに、今どこに課題があり、次に何へ投資すべきかを一緒に整理します。ブランドの成長機会を具体的に把握したい方は、お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。

※本記事はKantar Globalが公開した記事をもとに日本語訳・編集したものです。
原文(英語)はこちら:Innovating at the speed of culture and technology

【本件に関するお問い合わせ先】

– ディレクター、ヘッドオブグロース&マーケティング 小川朋子
– E-mail:marketingjapan@kantar.com

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