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Phase 3
ブランドは、どう共有されるのか?
グローバルでブランド価値を高めるために
監 修
瀬戸口 修
氏
瀬戸口&アソシエーツ 代表
ブランドを経営課題として捉え、その出発点が企業の意思にあることを確認してきた本連載。では、そのブランド価値をグローバルで共有し、各地域でのブランディングにどう生かしていけばよいのでしょうか。グローバル企業にとって、ブランドガバナンスは重要なテーマです。しかし、ルールをつくるだけでは機能しません。本社と現地法人、それぞれの立場や経験をどうつなぎ、共通の価値として共有していくのか。今回はCEO、CMO、現地法人代表の対話を通じて、その課題と可能性を考えていきます。
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現地法人代表
現地で採用・登用され、海外市場の最前線で事業を率いる責任者。日本のグローバル本社の方針と現地市場の現実の間に立ち、共通のブランド価値をどう理解し、現地でのブランディングにどう反映していくかに向き合っている。
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CEO
市場や社会の変化に違和感を抱きながら、本社で経営全体を俯瞰し、意思決定を担う存在。変化をどう理解し、経営に取り込んでいくべきかを模索している。
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CMO
企業価値や投資判断を意識しながら、ブランドを経営資産として捉え、経営と市場をつなげて考えている存在。本社で経営全体の視点からマーケティングを捉えている。
Scene 01
本社のルールは、なぜ現地で機能しないのか
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ブランドが経営課題になり、その出発点は企業の意思にあるという話をしてきた。
ただ、グローバルで事業を展開していると、また別の難しさが出てくる。
本社で決めたことが、そのまま海外で機能するとは限らない。 -
それは実感としてあります。
本社でブランドガイドラインや方針が整備されても、現地から見ると「日本の本社がつくったルール」に見えてしまうことがあるんです。 -
なるほど。
本社としては共通のブランド価値を守るためにやっていることでも、現地からすると違って見えるわけだ。 -
はい。
もちろんブランドの方向性には賛成しています。
ただ、現地には現地の市場があります。
文化も違う。
商習慣も違う。
競争環境も違う。
その中で、本社とまったく同じやり方を求められると難しいこともあります。 -
実は、その悩みは多くの現地法人で共通しています。
ブランドガバナンスというと、ルールをつくることだと思われがちです。
しかし、本当に難しいのはその先なんです。 -
その先?
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はい。
何を管理するのか。
そして、どうやって管理するのか。
ブランドガバナンスには、この二つの論点があります。 -
何を管理するのか。
どうやって管理するのか。 -
例えば、ロゴやビジュアルのルール。
ブランドガイドライン。
社員向けブランドサイト。
こうしたものは比較的整備しやすい。
しかし、それだけでブランドが浸透するわけではありません。 -
現場から見ると、その通りです。
ガイドラインはある。
でも、それを現地でどう解釈し、どう実践するか。
そこが一番難しいんです。 -
なるほど。
本社はルールをつくったことで安心してしまう。
しかし現地は、そのルールをどう生かすかで悩んでいる。 -
はい。
しかも日本企業の場合は、これがルールだと言って、
本社の権限で押し切ってしまうことは
現実的には難しいことです。 -
正直に言うと、本社より現地の方が市場を理解している場合もあります。
そういう状況で一方的に指示されても、現地で納得感は生まれません。 -
確かに。
ガバナンスという言葉を使うと、管理や統制をイメージしてしまう。
しかし、本当に必要なのは別のものかもしれない。 -
そう思います。
グローバルにおけるブランドガバナンスとは、本社が現地を管理することではありません。
世界中のメンバーが、同じブランドの意味を共有できる状態をつくることです。
ブランドガバナンスは、管理よりも共有から始まる
- グローバルにおけるブランドガバナンスには、「何を管理するか」と「どう管理するか」という二つの論点がある。
- ガイドラインやルールを整備するだけでは、ブランド価値は浸透しない。
- 本社と現地法人が同じブランドの意味を共有し、共通言語を持つことがブランドガバナンスの出発点となる。
Scene 02
世界共通で守るべきものは何なのか
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ガバナンスというと、どうしてもルールの話になりがちだ。
しかし、今の話を聞いていると、本当に重要なのはルールそのものではない気がしてきた。 -
そう思います。
現地で仕事をしていると、本社から送られてくるガイドラインよりも、「なぜそれをやるのか」の方が重要なんです。 -
なるほど。
ルールよりも、その背景にある考え方ということか。 -
はい。グローバルにおけるブランドガバナンスで最も重要なのは、世界共通で守るべきものを明確にすることだと思います。
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世界共通で守るべきもの?
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ロゴや表現のルールだけではありません。
企業として何を信じるのか。
社会に何を約束するのか。
どのような価値を提供したいのか。
その核になる考え方です。
第2回で話したIdentityも、その核になる考え方の一つです。 -
そこが明確だと、現地でも判断しやすくなります。
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判断しやすくなる?
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はい。
本社と現地で市場環境が違っても、「この企業は何を大切にしているのか」が共有されていれば、施策は違っても方向は揃えられます。 -
逆に、その核となるものが曖昧だと、ガイドラインだけが増えていきます。
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なるほど。
細かいルールで縛ろうとするわけだ。 -
そうです。
しかし、それではグローバルでは機能しません。
文化も違う。
商習慣も違う。
コミュニケーションの方法も違う。
すべてを本社の基準で統一することは現実的ではありません。 -
実際、同じメッセージでも国によって受け止められ方は変わります。
日本では自然でも、現地では伝わらないこともあります。逆もあります。 -
そうなると、本社はどこまで決めるべきなんだろう。
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私は、「何を守るか」と「どう実践するか」を分けて考えるべきだと思います。
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それはどういう分け方なのか?
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Identityやブランド価値の核となるものは共有する。
しかし、ブランディングの実践方法については、一定の裁量を認める。
共有するのはIdentityです。
ただし各地域では、それを市場や顧客にとって Meaningful、Different、Salient な形で届けていく必要があります。
そこまで含めて、現地の判断と実践が重要になります。 -
その方が現場は動きやすいです。
現地市場を理解している人間が、ブランドの考え方を踏まえて判断できるようになります。 -
本社がすべてを決めるのではなく、
本社は判断の基準を示す。
現地はその基準に基づいて実践する。
そういう関係か。 -
はい。
ブランドガバナンスというと統制を想像しがちですが、実際には、共通の価値観を共有しながら、各地域が最適な形でブランディングを実践できる状態をつくることだと思います。 -
現地からすると、その方が「やらされている感」がありません。
自分たちの市場で、自分たちの言葉としてブランディングを考えられるようになります。 -
なるほど。
世界共通で守るべきものは、企業としての意思と、そこから生まれるブランド価値の源泉なのかもしれないな。
グローバルで共有すべきなのは「ルール」ではなく「核になるもの=源泉」である
- グローバルにおけるブランドガバナンスでは、企業としてのIdentityや社会への約束を世界共通で明確にすることが重要である。
- 文化や市場環境が異なる以上、ブランディングの実践方法には一定の裁量や柔軟性が必要となる。
- 本社が示すべきなのは細かな指示ではなく、各地域が判断できる共通の価値観と、ブランド価値を支える核となる考え方である。
Scene 03
グローバル One Teamは、どうすれば生まれるのか
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Identityを共有することが重要だという話は理解できる。
ただ、それだけで本当にグローバル全体が動くようになるのだろうか。 -
正直に言うと、それだけでは難しいと思います。
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難しい?
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現地でブランディングを推進している人間は、本社と現地市場をつなぐ役割を担っています。
だからこそ、両方の期待に応えなければならず、難しい立場になることが多いんです。 -
本社と現地の間?
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はい。
本社の考え方を現地へ伝えなければならない。
一方で、現地の市場や文化、事業環境も理解しなければならない。
その両方をつなぐ役割を担うので、難しい立場になることが少なくありません。
例えば、現地でブランド施策を提案するとします。
すると営業責任者からは、「本当に売上につながるのか」と言われる。
Country Managerからは、「今やる必要があるのか」と聞かれる。
ブランディングを担当する人間は、常にその必要性や効果の説明を求められています。
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それは日本でも同じですね。
ブランディング担当者は、どうしても事業の最前線から少し距離のある存在として見られがちです。 -
しかも海外では、本社との距離もあります。
現地の事情を本社へ説明するのも大変ですし、逆に本社の考え方を現地へ伝えるのも簡単ではありません。 -
なるほど。
それぞれの地域で、ブランディングを推進する人たちが孤軍奮闘しているわけか。 -
だから私は、ブランドガバナンスで最も重要なのは、実はルールではなく同じブランド価値を共有できる「仲間」だと思っています。
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仲間?
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はい。
各地域にブランディングを担う人がいて、互いにつながっている状態です。
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それは本当に大きいです。
「同じ悩みを持っている人が世界のどこかにいる」と思えるだけでも違います。 -
なるほど。
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だから本社の役割は、ガイドラインを配布するだけでは足りません。
各地域の担当者をつなぎ、コミュニティをつくる必要があります。 -
現地としても、本社から方針だけでなく、本社や他の国での成功事例も合わせて共有してもらえる方が納得しやすいんです。
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確かに。
「本社が言っているから」ではなく、「同じ現場の人間が成果を出している」という方が説得力がある。 -
そうなんです。
だから定期的な対話が必要になります。
本社からの情報共有だけではなく、現地同士が学び合う機会です。 -
実際、ベストプラクティスが共有されると、全体のレベルが上がります。
経験や知見の差も埋まりやすくなります。 -
ブランドガバナンスというと管理をイメージしていた。
しかし今の話を聞いていると、むしろ知識や経験を共有する仕組みの方が重要なのかもしれない。 -
私はそう思います。
共通のIdentityを持ちながら、それぞれが学び合い、支え合う。
その状態ができて初めて、グローバル One Teamに近づいていくのだと思います。 -
その時には、「本社のブランド」ではなく、「私たちが育てるブランド」になっているんです。
ブランドガバナンスは、コミュニティによって機能する
- グローバルでブランディングを推進する担当者は、それぞれの地域で説明責任を求められ、孤立しやすい立場 にある。
- 本社の役割はルールを配布することではなく、担当者同士をつなぎ、共通言語と学びの場を提供することである。
- ベストプラクティスの共有と相互理解を通じて、「本社のブランド」ではなく「私たちのブランド」という意識が生まれ、One Teamの基盤が形成される。
Scene 04
本社は、管理者なのか。それとも支援者なのか
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ここまで話を聞いていて、一つ考えさせられることがある。
本社は、いったい何のために存在しているのだろう。
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正直に言うと、現地から見ると、本社は少し遠い存在に感じることがあります。
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遠い?
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はい。
ブランディングを進めようとすると、現地では必ず説明を求められます。
営業責任者からは、「本当に売上につながるのか」と言われる。
Country Managerからは、「今優先すべきことなのか」と聞かれる。 -
確かに。
現場は常に結果を求められている。 -
だから担当者は、施策を実行するだけではなく、その必要性や価値を説明し続けなければなりません。
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そこが重要なんです。ブランディング担当者は、活動を進めるだけではなく、社内の理解を得る役割も担っています。
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つまり、ブランド価値を証明し続けなければならない。
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はい。
だから本社は、「これをやりなさい」と言うだけでは不十分です。
ブランドがどのような価値を生み出しているのか。
どう企業価値につながるのか。
どう市場との関係を強くしているのか。
そうしたことを、定性的にも定量的にも説明できるようにする必要があります。
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現地としては、そういう材料が本当に欲しいんです。
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材料?
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はい。
現場では常に、「なぜ必要なのか」を問われます。
その時に、本社が一緒に説明してくれる。
あるいは、説明できる根拠を提供してくれる。
それだけで状況は大きく変わります。 -
なるほど。
本社はルールをつくるだけではなく、現地が説明できるように支援する役割もあるのか。 -
私はそう思います。
ブランドガバナンスとは、統制ではありません。
現地を孤立させないことです。 -
それは本当に大きいですね。
「本社が同じ側で考えてくれている」
と思えるだけで、現地は動きやすくなります。 -
味方ということか。
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はい。
時には本社の人にも現場へ来てほしいんです。
現地の状況を見て、一緒に説明して、一緒に考えてほしい。 -
なるほど。
遠くから指示するだけではなく、必要な時には矢面にも立つ。 -
それが信頼につながります。
そして信頼があるからこそ、ブランドガバナンスも機能するんです。 -
ここまで聞いていて、ブランドガバナンスという言葉の意味が少し変わってきた。
管理することではない。
世界中のメンバーが同じ方向を向けるよう支援すること。
それが本来の役割なのかもしれない。
本社の役割は、統制ではなく支援である
- ブランディング担当者は、施策の実行だけでなく、その必要性や価値を社内に説明し続ける役割を担っている。
- 本社はルールを提示するだけではなく、ブランド価値を可視化し、現地が説明責任を果たせるよう支援する必要がある。
- 真のブランドガバナンスとは、管理や統制ではなく、現地を孤立させず、世界中のメンバーが同じ方向を向ける環境をつくることである。