AIへの期待と不安
AIツールは、仕事から日常生活まで、さまざまな場面に広がっています。その一方で、AIが環境や社会にどのような影響を与えるのかについては、まだ十分に理解されていません。人々はAIに何を不安に感じ、どのような可能性を期待しているのでしょうか。
AIは、影響が見えにくい存在
サステナビリティ・セクター・インデックス2025によると、AIツールは、環境や社会との関わりが最も理解されていない分野の一つです。世界では30%の人が、AIに関連する環境・社会上の課題を一つも挙げられませんでした。国別では、オランダ47%、ルーマニア43%、日本39%、英国とドイツ38%です。これは、人々がAIに関心を持っていないからではありません。AIが環境や社会に与える影響を、日常生活の中で実感しにくいためです。一方、世界の70%は、AIに関する懸念を少なくとも一つ挙げており、一人当たりの回答数は平均4項目でした。

特に多く挙げられたのは、炭素排出や気候変動といった環境問題ではなく、次のような社会・経済上の課題でした。
- 社会的な孤立や孤独
- メンタルヘルスへの影響
- これから必要となる学びやスキルの不足
- 十分な生活賃金を得られる仕事の不足
- 経済格差の拡大
- 企業による汚職や租税回避
- 職場における権利尊重の不足
- 倫理や環境への配慮が不十分な事業活動
- 社会的不平等
- 人種差別的なコンテンツや行動
このうち、「十分な生活賃金を得られる仕事の不足」「メンタルヘルスへの影響」「経済格差の拡大」は、社会全体で重視される課題のトップ10にも入っています。また、調査対象となった42分野の中で、AIは「社会的な孤立や孤独」と「これから必要となる学びやスキルの不足」に最も強く結び付けられていました。人々はAIを、単なる新技術ではなく、仕事や学び方、人とのつながり、社会のあり方まで変える存在として見ています。
社会への不安と、気候への希望
社会・経済面への不安がある一方、AIが環境問題の解決に役立つという期待もあります。排出量の削減や効率の向上など、環境改善への貢献度について、AIツールはマイナス100からプラス100までの指標でプラス78となり、多くの分野を上回りました。また、汚染の抑制や、森林破壊・生物多様性の損失が少ないという点でも良い評価を得ています。企業や団体が実態以上に環境へ配慮しているように見せる「グリーンウォッシュ」との結び付きも、比較的弱いと見られています。ただし、これはAIが十分に信頼されているからとは限りません。AIの環境への影響が、まだ広く知られていないことも理由だと考えられます。だからこそ、AIを何のために使い、環境や社会にどのような影響を与えるのかを分かりやすく伝える企業には、大きな機会があります。
AI利用の広がりに、理解が追いついていない
2025年、AIは一部の人だけが使う特別な技術ではなくなりました。Amazonではロボット従業員数が人間の従業員数に近づき、AIはインターンシップや新卒・若手向けの仕事を変えています。Googleは、AIデータセンターの電力を賄う方法として核融合に期待を寄せています。AIは新しい可能性を生み出す一方で、仕事や社会に変化を迫る存在にもなっています。
世界では40%の人がAIツールを日常的に利用しています。ここには生成AIだけでなく、幅広い用途やアプリケーションが含まれます。しかし、環境や社会への影響に関する認知度では、AIは調査対象42分野の最下位でした。

現在AIを利用している人の63%は、環境や社会に貢献するAIツールを試したり、導入したりすることに前向きです。それでも、こうした配慮が実際のツール選びに与える影響は、まだ限られています。 最大の壁は、価格ではなく情報不足です。27%を超える人が、より環境や社会に配慮したAIツールを選ぶための情報が足りないと回答しました。そのほか、「よく知らない」と「選択肢がない」がそれぞれ19%、「影響を調べることが難しい」が18%でした。食品やファッションと比べ、AIは環境や社会への影響が見えにくく、ツール同士を比較することも簡単ではありません。人々はより良いAIを選びたいと考えていますが、判断するための情報が不足しているのです。
ブランドに求められること
カスタマーサポート、一人ひとりに合わせたサービス、コンテンツ制作などにAIを取り入れる企業には、先頭に立つ機会があります。重要なのは、便利な機能を提供することだけではありません。AIをどのように使い、環境や社会への責任をどう果たすのかを具体的に示すことです。
人々は、AIが環境問題の解決に役立つことを期待しています。その期待を実際の利用につなげるには、AIを導入したという事実だけでなく、どのような価値や違いを生み出すのかを伝える必要があります。
AIサービスを提供する企業には、炭素排出を抑え、倫理に配慮して選定したデータでAIを学習させ、さまざまな人が利用できるように設計することが求められます。同時に、仕組みや運用方法をできる限り明らかにし、利用者が安心して選べるようにすることも重要です。AIツールが増え、機能の違いが小さくなる中で、最後に選ばれる理由となるのは、スピードや規模ではなく信頼です。
AIは社会をより良くできるのか
調査結果が示しているのは、人々がAIの社会への影響に不安を感じる一方、気候変動への貢献には希望を持っているということです。企業に求められるのは、AIをただ導入することではありません。AIを理解しやすく、倫理的で、環境や社会に配慮したものにしていくことです。
AIの未来を決めるのは技術だけではありません。AIに何ができるのか、何をすべきなのかという、人々や企業の考え方もその未来を形づくります。
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※本記事はKantar Globalが公開した記事をもとに日本語訳・編集したものです。
原文(英語)はこちら:Social fears, climate hopes: The consumer view on AI
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